(パートナーシップ契約締結会見の様子)
■大学スポーツを支えるために必要なこと
取材現場から見える大学スポーツの世界は、熱気と可能性に満ちています。このたび一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)と日本郵政、NHKエデュケーショナルが締結したパートナーシップ契約は、単なる支援体制の構築だけでなく、学生アスリートの人間的成長をも見据えた画期的な取り組みといえる。
大学スポーツの振興と学生のキャリア形成支援を目的としたこの連携は、競技の枠を超えた価値創造への第一歩となります。 学生野球の取材をしてきた私の目には、プレーの向上だけでなく、人としての成長過程も映し出されてきました。マウンドで悔し涙を流す投手、チームメートを鼓舞する主将、懸命に声を出し続けるベンチの選手たち…。彼らの姿には、社会に出てからも生きる力が宿っています。しかし同時に、まだ心の成長途上にある若者たちであるということも忘れてはなりません。
今回の3社連携では、日本郵政はUNIVASのオフィシャルスポーツパートナーとして、日本スポーツ協会(JSPO)と連携した部活動指導者の養成プログラム強化に取り組み、大学生が指導者としての経験を積める環境を整備。また全国各地の大学と連携した地域スポーツクラブの設立支援を通じて、地域住民と大学生がスポーツで交流できる場を提供。さらに企業連携による学生アスリートのキャリアパス構築支援や、「My UNIVAS」プラットフォームを活用した大学スポーツのデジタル化も加速させ、日本郵政の全国ネットワークを活かした情報発信を強化します。
さらにNHKエデュケーショナルとの連携では、インテグリティ(誠実さや高潔さ、一貫した倫理観)教育アプリ「まこトレ」の導入が目をひきました。このアプリは組織のガバナンスやコンプライアンスの強化を目的としており、クイズ形式やゲームを取り入れた学習プログラムで、競技者としての倫理観や規範意識を高める取り組みになっています。学生アスリートの心の成長に大きく貢献するでしょう。
大学スポーツの現場では、競技と学業の両立に悩む学生、将来のキャリアに不安を抱える学生が少なくありません。日本郵政によるキャリア形成支援は、スポーツで培った経験を社会でどう活かすかという視点を提供し、競技人生の先を見据えた成長を促します。これは瞬間的な記録や勝利を超えた、真の意味での「勝利」への道筋ではないでしょうか。
高校までの厳しい競争を勝ち抜き、大学でも高いレベルで競技を続ける彼らには、才能と情熱があります。しかし、一瞬の過ちで競技人生にピリオドを打つ例も珍しくありません。スポーツマンシップを欠いた行動、倫理観の欠如による不祥事は、才能の芽を摘むだけでなく、その後の人生にも影響を及ぼします。 大学スポーツの真の価値は、勝敗や記録だけでなく、社会人としての基盤を築く場であることにもあります。UNIVASと日本郵政の連携が目指す「大学スポーツの持続可能な発展」とは、競技としての発展だけでなく、人間力の育成という側面も含んでいるのです。
スポーツには人を育てる力があります。ルールを守る誠実さ、チームメイトを思いやる優しさ、目標に向かって諦めない強さ。これらは競技場を離れても、社会で活きる力となります。 彼らの競技人生、そしてその先の人生も豊かなものになってほしい。UNIVASと日本郵政の新たな挑戦が、大学スポーツの価値を高め、学生アスリートの未来を明るく照らす光となることを、一人の取材者として心から期待している。