(写真提供・イワキテック)
■イワキテックがJABA四国大会に参戦
瀬戸内海に浮かぶ岩城島。この愛媛県の離島で、ある挑戦が始まっている。造船関連製品を製造するイワキテック株式会社が社会人野球チームを設立し、2025年3月からJABA四国大会に参戦するのだ。
私が注目するのは、この取り組みが単なる企業スポーツの枠を超え、球界と地域に新しい風を吹き込む可能性を秘めていることだ。
野球の世界では、プロに進めるのはごくわずか。中学、高校、大学と野球に打ち込んできた若者たちの多くは、進学や就職を機に競技から離れざるを得ない。才能があっても、プレーを続ける場所がなく諦める若者が後を絶たない。
この現実に一石を投じるのが、イワキテックのような地方企業による野球チーム設立だ。「野球を続けたいが受け皿がない選手が多い」という課題に応え、彼らに「まだ挑戦できる」という希望を提供している。
社会人野球の受け皿が増えることは、球界にとって素晴らしいことだ。それは単に技術を持った選手の受け皿になるだけではない。競技を続けられる環境があることで、若者たちの可能性が広がる。プロへの道が閉ざされたと思っていた選手が、社会人野球での活躍を経て再びプロの世界へ挑戦するケースも少なくない。
さらに、こうした取り組みは地域にも新たな息吹をもたらす。岩城島を含む上島町は野球熱が高く、少年野球や中学野球が盛んな地域だ。しかし、これまで地元の選手たちは進学を機に地元を離れ、そのまま戻らないケースが多かった。社会人野球チームの存在は「地元で野球を続けながら働ける環境」を創出し、若者の流出に歯止めをかける可能性を秘めている。
野球を通じて人が集まることによる経済効果も見逃せない。観光で有名な場所でもあり、訪問者が増えれば、地元の飲食店や宿泊施設を利用し、地域経済の活性化につながる。選手たちが地元の子どもたちの指導に関わることで、次世代の育成にも貢献できる。
これこそがスポーツの持つ力であり、魅力だ。単なる娯楽や競技の枠を超え、人々の希望を繋ぎ、地域に活力をもたらす。スポーツは時に、経済や地域活性化といった社会課題の解決策となり得るのだ。
「上島町から全国へ」をスローガンに掲げるイワキテック硬式野球部。彼らの挑戦は、地方創生の新たなモデルとなる可能性を秘めている。野球という競技が、離島の雇用創出と地域活性化の両方を実現する鍵になるかもしれない。
スポーツには、人の心を動かし、社会を変える力がある。ボールを追いかける情熱が、若者に希望を、地域に活力をもたらす。イワキテックの取り組みは、その可能性を私たちに示してくれている。3月23日、今治市での春季四国大会でのデビュー。この離島発の挑戦が、日本の地方創生に新たな一歩を刻むことを期待したい。
Full-Countに詳細記事があります。
https://full-count.jp/2025/01/26/post1691635/