先日スポーツ新聞(12月11日、日刊スポーツ)に載った大谷翔平選手(ロサンゼルス・ドジャース)のインタビューが衝撃的だった。
いくつかのメディアが共同で行ったオンラインのインタビューだが、その内容は、驚きと同時に彼のすごさを改めて知る超冷静な思考だった。
まずもって驚いたのは、彼が投手として肘の手術をあらかじめ想定していることだ。
TJ(トミー・ジョン手術)については、こう話している。
「TJに関しては必ずするだろうなとは思っていたので、それはメジャー1年目だとは思っていなかったですけど、そこは必ずすると思っていました。2回目のタイミングはやっぱり5、6年投げてどうだろうなと想定していましたけど、逆に5、6年経ったのが今年の終わりくらいなので、30歳の終わりで2回目のTJをするより、逆に早い方が良かったのかなと思う部分も今思えばあったりと思うので、タイミングに関しては分からないですけど、そういういろんなパターンを想定しておくことが大事だなと思いますね」
またTJに関してはこうも言っている。
「(前略)いろいろ想定していく中で、現実的に3回目を受けるのがおそらく希望としては5年以上は延びてほしいとは思っている。年齢的に例えば35を過ぎたあたりで3回目の手術をして、復帰に1年かけて、という領域に入っていくのが正しい選択になるのかどうかは、そのときの自分のコンディショニングにもよると思うので、現実的に見れば、やはり2回目くらいまでが投手としては理想なのかなと思っています」
こうした未来への予想を悲観的と言うのか楽観的と言うのか分からないが、自分にとって歓迎できないようなことも、冷静に受け止めてその対処を想定しておくことに彼のすごさを感じないわけにはいかない。
それは、誰でも容易に想像できることだろうが、自分にとって厳しいこと(TJ)はなかなか受け入れがたいはずだ。しかし、大谷翔平という人は、そうしたネガティブなことから目を逸らすことなく、自分の将来を冷静に見つめているのだ。
そして、これはもしかして多くの人に励みになる話かもしれないが、目標やモチベーションについて大谷選手はこう言っている。
「(前略)モチベーションをどう高くしようと思ったことはないですね。あまり考えなくても、そこは昔から、進むにつれて、むしろ高くなってきたなっていう。MVPをもらったからとか、優勝したからっていうのは、1つの形でしかないので、一番大きな部分は、現役でいられるうちにどれだけ多く、技術であったり、フィジカルっていうのを、自分の中で高めていけるのかっていうのが、まぁ趣味みたいな部分ではあると思うので、そこは特に考えたことがないですかね」
この大谷選手が言うモチベーションの関しては、いくつかの解釈があるかもしれないが、私には「自然体でいいのだ」と聞こえる。特別に強い気持ちを持たなければということではなく、趣味のように好きなことに没頭する。そうすれば自ずとやる気や楽しさは湧き上がってくると教えてくれている気がする。
ケガや故障は、誰にとっても嫌なことだ。
しかし、大谷選手のすごいところは、そうしたことも想定しながら、それに負けることなく乗り越えていくことをイメージしていることだ。
その意味では、将来に対してつねに冷静でありながらも、超ポジティブということも言えるのかもしれない。
いずれにしても、これが超一流選手の思考法なのだろう。
「すごい」としか言いようがない(笑)。