令和の断面

vol.234 おめでとう ファジアーノ岡山

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     「ぼっけぇうれしい」
     岡山弁ですごくうれしいことをそう言うらしい。

     この日(12月7日)のスタンド(岡山シティライトスタジアム)には、そして街の中にも、こうした声があふれたことだろう。
     長い間、J2でプレーしてきたファジアーノ岡山が、Jリーグ参戦16年目で初のJ1昇格を果たした。

     昇格を賭けたプレーオフは、地元岡山でのベガルタ仙台戦。
     J2で5位の岡山が同6位の仙台を2対0で破って悲願のJ1昇格を決めた。 岡山はこれまで2度、昇格を賭けたプレーオフに出場していたが、3度目の正直でついに念願が叶った。

     クラブの前身は川崎製鉄水島のOB が結成したリバーフリーキッカーズ(1975年)。2004年からファジアーノ(桃太郎にちなんでイタリア語でキジ)で活動を開始し、07年に準加盟、09年からJ2でのプレーが続いていた。
     Jリーグのクラブのほとんどが母体となる大企業を後ろ盾に持っているが、岡山はそうした企業を持たない純粋な市民クラブだ。多くの地元企業からサポートしてもらい、小さな予算でクラブを運営している。今期の活動費約20億円(人件費は約7億円)も、J1では最低規模の予算になる。
     それでも昇格を果たしたところにこのクラブの魅力と意地がある。

     派手なストライカーはいないが、徹底した守りのサッカーで激戦をしのいできた。就任3年目の木山隆之監督のもと、堅守速攻のサッカーを磨き、リーグ戦38試合で相手を無失点に抑えたのは20試合に及んだ。1試合平均失点は「0.76」、失点数(29点)はリーグ2番目に少なかった。
     この日も仙台を0封。
     ベガルタの森山佳郎監督も「岡山は守らせたら天下一品。そこを崩す迫力がなかった」と岡山の守りを称賛した。
     最後まで自分たちの持ち味を最大限発揮した今季の岡山の戦いぶりは見事だった。

     この稿で伝えたいのは、まずもって岡山サポーターへの祝意だが、もうひとつ取り上げたいのはJリーグをはじめとするスポーツチームの全国への広がりだ。
     岡山のJ1参入で、Jリーグを経験するクラブは33クラブになった。本拠地を置く自治体で数えると23都道府県でJ1クラブが誕生したことになる。
     またJ1、J2、J3からなるJリーグを経験しない都道府県は、福井県、滋賀県、三重県、和歌山県、島根県の5県となっている。現在Jリーグのクラブは、J1(20)、J2 (20)、J3(20)で全国に60クラブある。

     先達のプロ野球は、NPBが12チーム。
     人気がどんどん高まっているバスケットボールのBリーグは、B1(24)、B2(14)、B3(17)で55チームが誕生している。
     またこの他にもバレーボールや卓球など、さまざまなリーグが活動している。 そして女子サッカーのWEリーグをはじめとする女子リーグもある。

     こうした全国に広がるクラブやチームの存在は、地方創生に間違いなく寄与している。それは経済、教育、健康、医療、福祉、国際交流につながる広範な魅力と機能を持っている。
     スポーツを通じた地域の活性化は、これからの日本にますます必要な社会活動となっていくことだろう。

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