令和の断面

vol.229「ベイスターズ躍進の端は2015年にある」

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     横浜DeNAベイスターズが福岡ソフトバンクホークスとの日本シリーズを制し(4勝2敗)、98年以来26年ぶりの日本一に輝いた。リーグ戦では3位に終わったベイスターズだったが、CS(クライマックスシリーズ)を激戦の末に勝ち上がり、優勝を決めたホークスとの日本シリーズも2連敗からの逆転劇でDeNAとしての初優勝を成し遂げた。

     チーム創設13年目の優勝には、グラウンドベース(監督・選手)の要因と球団ベース(チーム運営・ビジネス)の要因があると思う。

     まずグラウンドベースで言えば、牧秀悟の加入と彼の活躍が近年のDeNAの原動力になってきた。入団1年目(20年ドラフト2位)からほぼ全試合に出場し、ホームラン22本、打率3割1分4厘の好成績を挙げた。その後も3割近い打率を毎年残し、ホームランも20本以上をキープしている。
     しかし、牧の活躍は打撃だけではない。難しいセカンドの守備を無難にこなし(本当は2塁手タイプの選手ではない)、おかげでオースチンや筒香を1塁に置き、宮崎を3塁に固定できる攻撃的な選手起用が可能になった。

     そして、さらに言えば(これが一番大きな効果かもしれない)、人懐っこく明るいキャラクターの牧が、チームのムードメーカーになり、まとめ役になっていることだ。その人望が認められて、今シーズンからキャプテンにもなっているが、これが見事に機能したというのが、私の見立てだ。

     また三浦大輔監督にも言及しないわけにはいかない。

     三浦監督の人柄と采配がどんなものかは、このコメントを読めばすぐに分かるだろう。

     「入団当時からお世話になった恩師の小谷さん(現コーチングアドバイザー)にもよく言っていただいたけど『己を知れ』と。それは監督になっても同じ。俺の力なんてたいしたことない。ちっぽけなものだよ。だからコーチ、スタッフからいろいろな案を出してもらってるし、助けられてる。決断して責任を持つのは俺だけど、『周りの方に恵まれてる』というのが、俺の監督としての強みかな」
                                                                                                                                   (※11月4日付け日刊スポーツ)

     そして、監督をサポートしてくれるコーチスタッフ10人と自らを入れて、映画「オーシャンズ11」よろしく「番長ズ11」と呼んでいるところにも、彼のマネジメントスタイルの妙があるのではないかと思う。

     球団運営に関しては、さまざまな改革を行ってきているが、ひとつ挙げるとすれば2015年に行った帽子の配布だ。
     フランチャイズを置く神奈川県内の幼稚園 683園、小学校 897校、特別支援学校(幼稚部および小学部)45校、保育所、認定こども園、私設保育施設など2105箇所、合わせて県内3730箇所の施設の子どもたちにベイスターズの帽子をプレゼントしたのだ。その数72万人。

     帽子を配る前年2014年の観客動員数は約156万人だったものが、23年には約220万人、24年は約240万人と増え続けているのだ。

     その間、球場の改修やさまざまなイベントの開催など、二の矢、三の矢が次々と放たれているが、近隣の子どもたちを味方につけて連日球場を満員にしている環境が選手たちをよりハッスルさせていることは間違いないだろう。

     DeNAとソフトバンクの日本シリーズが象徴しているように、IT系の企業が躍進している近年の産業構造が、野球界にも表れているということも書き添えておこう。

     さまざまな局面で、プロ野球の新しいトレンドが始まっている。

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