楽天にドラフト1位指名を受けた楽天・宗山塁(写真提供・Full-Count)
■指導者に持ってもらいたい思い
2024年10月24日、「プロ野球ドラフト会議 supported byリポビタンD」が都内のホテルで開催された。支配下、育成含め、123名が名前を呼ばれ、NPB選手として船出する。笑顔あり、涙あり。ズラリとならぶ一覧を見て、気になったことがあった。今年のドラフト1位は“早生まれ” (1月1日~4月1日生まれ)が多いな、と。
例年に比べて、前日まで1位指名を公表する球団は少なかった。これは、“2強”を示していた。関大の左腕・金丸夢斗投手と、明大の宗山塁内野手の2人に指名が集まることが予想され、それが各球団内でわかっていたということだ。それだけ、この2選手が秘める能力は高いことがうかがえる。
予想されるのが3、4球団の競合だった場合、事前に公表しておくことで3球団が2球団に、4球団が3球団に減らす“牽制球”となる。しかし、初めから5球団くらい、またはそれ以上となるのであれば、手の内を明かすことになり、公表はあまり意味を持たない。他球団が公表をしないことで、“2強”が予想できるのであれば、あえて、違う選手を単独、または少ない競合で狙うという球団も出てくるだろう。そんな思いで、今年のドラフト会議を見つめていた。
結果として、中日が交渉権を得た関大の金丸には4球団、楽天が交渉権を得た宗山には5球団が入札。そして、ロッテが交渉権を得た青学大の西川史礁外野手はオリックスと競合。ヤクルトは単独で愛知工大の中村優斗投手を指名することに成功した。この4選手は昨年から注目を浴びた大学生カルテットだった。
この4選手には共通点があった。誕生日に注目してほしい。金丸は2003年2月6日、宗山は2003年2月27日、中村は2003年2月8日、西川は3月25日と早生まれなのだ。ちなみに西武1位の金沢・齋藤大翔内野手は2007年1月27日、ソフトバンク1位の神戸弘陵・村上泰斗投手は2007年2月20日。ドラフト1位12人中、6人が1月から3月生まれだった。
少年野球を取材していると、子どもの発育、発達と誕生日には大きな関係性があることがわかってきた。この種の研究を進めている東京農業大学の勝亦陽一先生は、指導者が子どもたちの誕生日月を把握した上で指導をする必要があると強く訴えている。
研究によると小・中学生のスポーツをする選手ではその影響が大きく表れる。学童野球などで投手や捕手、遊撃手といった中心選手になるような子は4~6月生まれが多いというデータもある。資料を実際に見せてもらったことがあるが、その通りだった。年齢が上がるにつれて、生まれ月の影響は少なくなるが、早く野球が嫌になって辞めてしまう子も早生まれでは多くなってしまう。
理由は上手な子が試合で優先的に起用され、体が小さい、発育や上達が人より遅いということから試合に使われなかったりすることがあるからだ。それはあってはならない。子どもたちにそれを理解させることは容易ではない。だからこそ、大人が理解しておくことが必要なのだ。
野球を続けていれば、大成する可能性のある早生まれの子の起用を“後回し”にしていないか。晩熟型の子を埋もれさせていないか、野球に関わる大人には考えてほしいとメディアを通じて、伝えてきたつもりだ。だから、今年のドラフト候補一覧を読んで、ドラフト1位に6人も早生まれがいたことに嬉しくなった。同時に幼少期の彼らの指導者、保護者が温かく育ててくれていたのであれば、感謝の気持ちを伝えたい。野球界にとって大きな損失とならないで本当に良かった。
成長期がいつやって来るか、わからない。そこには個人差がある。繰り返しになるが、指導者も保護者も長い目で選手を見つめることが必要だ。