Vol.12 プライオボールが日本の野球をバックアップ

スコアブックの余白

■ドライブラインベースボールが日本展開

 アスリートなら一度は「ドライブライン」という言葉を聞いたことがあるだろう。米・シアトルに本社を構える世界最先端の科学的野球トレーニング施設「ドライブラインベースボール」のことを指す。ドジャースの大谷翔平投手をはじめ、メジャーリーガー、日本のプロ野球選手も多く利用している。

 大谷投手が試合前のアップをしている時に、重さが異なるカラフルな投球練習用のボールを使用しているのを何度か目にしたと思う。プライオボールと呼ばれ、MLB全球団、全米の大学からユース世代まで幅広く使用されている。ドライブラインがデータ解析に基づいて開発した「後ろ向きに投げる」などの独創的でユニークなトレーニングドリルをプライオボールを使用することで行うことができるとあり、日本人選手からの幅広い信頼を得ている。

 日本でも注目度が増し、個人輸入をして使用する選手もいれば、模倣品までも出回っている。実はそのプライオボールは100グラムから1.5キロまで6種類も存在している。それぞれに狙いや目的がある。分析して、その選手に合った重さや、トレーニング方法、練習の取り組む順番がある。プロの選手が使っているから…と理由で手を出してしまうとリスクも潜んでいる。

 独自のトレーニング理論を持つ指導者もプライオボールを取り入れた練習メニューを組んでいる。実際に米国まで学んだ指導者も存在はしているが、子どもたちが使用する場合は細部まで留意して取り組むべきだと考える。間違った知識が、未来ある子どもたちの体を壊してしまうこともあり得るからだ。

 そこで、ドライブライン・ベースボールは今秋から日本国内で事業を展開することになった。大谷投手以外にも日本からの信奉者は多いため。施設側も日本のために力になりたいと考えた。まずはホームページ上での商品の販売と科学的メソッドの提供から始めていくという。

 米国でのメソッドを細部にまでこだわって、日本語による初めてのガイドブックを制作し、公式サイトにて無償で配布していく。そこで子どもたちでも正しい体の使い方、投球動作を身につけることができようにする狙いがある。投球機能の改善も期待できる。

米国の最先端の技術や分析が日本でも取り入れられることは幸せなことだ。ただ、不確かな情報に左右されてしまう危険性もある。そこに警笛を鳴らす意味でも日本の公式販売を始めたことは意義がある。元来のプライオボールの効能である、怪我予防をしながら球速、球質がアップする理想のフォームを手に入れ、さらなる日本野球にお技術向上につながることを期待したい。

楢崎 豊(NARASAKI YUTAKA)
2002年に報知新聞社で記者職。サッカー、芸能担当を経て、2004年12月より野球担当。2015年まで巨人、横浜(現在DeNA)のNPB、ヤンキース、エンゼルスなどMLBを担当。2015年からは高校野球や読売巨人軍の雑誌編集者。2019年1月に退社。同年2月から5つのデジタルメディアを運営するITのCreative2に入社。野球メディア「Full-Count」編集長を2023年11月まで務める。現在はCreative2メディア事業本部長、Full-CountのExecutive Editor。記事のディレクションやライティング講座、映像事業なども展開。

関連記事