令和の断面

vol.222「五輪とサーフィン」

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     8月下旬。
     横浜市港北区の文化センターでスポーツに関するシンポジウムが開かれた。
     「スポーツのチカラで人生を輝かせる!」
     パネリストは、元慶応義塾大学野球部監督の鬼嶋一司氏(扶桑電気株式会社・代表取締役社長)、東京五輪2020でサーフィン日本代表の監督を務めた宗像富次郎氏(元神奈川県議会議員)、そして不肖・青島。
     司会進行をサーフィン連盟公認ジャッジでありスノーボードの指導員でもある岡みゆき氏(大磯町議会議員)が務めた。

     鬼嶋さんは、私が大学1年の時の4年生。
     当時は先輩後輩の厳しい時代で口もきけないような関係が普通だったが、鬼嶋さんは優しい先輩で野球を含めいろいろ指導してもらった。

     まずは、それぞれの参加者が自己紹介を兼ねて、自身のバックグラウンドや競技生活を話し、会場が温まったところで次のようなトピックについてみんなで意見を述べ合った。

    ・スポーツがもたらす感動の力
    ・挑戦することの大切さを知り、モチベーションを高める
    ・だれもが夢を実現できる
    ・スポーツを通して得られるもの

     鬼嶋さんは、高校野球やパリ五輪から「グッド・ルーザー(敗者の美学)」を語り、青島は五輪ビジネスやプロスポーツの観点から、現代のアスリートの経済活動などについて言及した。
     岡さんも司会者とは言え、アスリートとして活躍してきた人なので、女性の視点からも貴重な意見を述べていた。

     そうした中、私が特に印象に残ったのは、宗像さんがスポーツにおける人間力の向上を強く訴えていたことだった。

     宗像さんが監督を務めた東京五輪2020では、男子の五十嵐カノア選手が銀メダル、女子の都築有夢路選手が銅メダルを獲得し、男女共素晴らしい成績を収めた。
     こうした選手たちの活躍には、彼らの人間的成長が大きかったと宗像さんが当時を振り返ったのだ。

     「東京で採用されることが決まってから、日本チームとして合宿を何度か行ってきたのですが、10代の若い選手は、挨拶すらできないようなところもあったんです。でも、それでは勝てない。自分で自分をしっかりマネジメントする。選手とコミュニケーションを取りつつ、そうした礼儀のようなこともみんなで出来るようにしていった。そうしたことで人間的な自信も生まれて、選手たちが自分のチカラを発揮できるようになっていった気がします」

     私が長く取り組んできた野球は、昔から先輩後輩の関係に厳しく、挨拶や礼儀を強く求められる競技、、、、その文化は今も変わらない。

     そこにスポーツなのだから「もっと自由にやろう」と登場したのが全国優勝を果たした慶応高校の「エンジョイ・ベースボール」だったのではないかと、私は思っている。
     しかし、五輪を機にサーフィン界に起こった環境変化は、こうした野球界の流れとは逆の影響だったようだ。

     宗像さんが言った。
     「サーフィンは、何よりも自由なスポーツです。でも五輪競技になったおかげで今まで以上に注目を集めるようになった。そうした中で選手たちのモチベーションも上がり、若い選手たちの人間力が高まってみんな人間的に素晴らしい成長を見せた。まさにスポーツのチカラだと思います」

     五輪の魅力、スポーツのチカラを語り合った有意義な2時間だった。

    青島 健太 Aoshima Kenta
    昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
    慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
    同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
    5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
    オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
    現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
    2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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