令和の断面

【令和の断面】vol.217「パリ五輪、その目的と意義」

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     パリ五輪の開会式が行われる日に、国会見学で小学生が10人ほど議員会館を訪ねてくれた。子どもたちに向けてのツアーは、この夏2回目でみんな興味津々で回ってくれるので案内にも思わず力が入ってしまう。

     毎回、国会内を見てもらう前に、議員会館の会議室で子どもたちと話をすることにしている。1回目は、「平和」について、2回目のこの日は、開幕する「五輪」についてみんなで話し合った。

     五輪を開催する目的や意義はどこにあるのか?
     小学校の低学年には、少し難しい質問だと思ったが、びっくりするほどみんなしっかりと自分の意見を述べてくれた。

     ・それぞれの国の実力が分かる。
     ・いろいろな人に会うことができる。
     ・旅行が活発になる。
     ・国民が盛り上がる。
     ・選手に目標ができる。
     ・等々

     質問しておきながら、こう言うのも失礼だが、こんなにちゃんとした答えが返ってくるとは思わなかった。

     クーベルタンの提唱によって1896年(アテネ)に始まった近代五輪。
     2回目の1900年にパリで開催され、1924年に続いて今回がパリでの3回目の五輪である。

     かつては、五輪を招致することでその都市のインフラを整えて発展の原動力にすることが大きな目的の一つだった。1964年の東京大会も、五輪に向けて首都高速道路が整備され、東海道新幹線も五輪を契機に開業した。
     しかし、近年の五輪は、その都市での2回目、3回目となるような開催が多く、新しいインフラを整備するのではなく、既存の施設をどうやって再活用するかということがテーマになっている。

     3回目の五輪になるパリも、もう十分にインフラは整っている。新しい競技場やアリーナ、パビリオンなどを作る必要はなく、今あるものをどうやって再利用するかということが最近の五輪の基本姿勢になっている。

     競技場を使わず、セーヌ川で行われた開会式は、まさにフランスならではの演出であり、芸術の国の面目躍如だったと思う。

     それゆえに、今回の五輪に期待されることは、子どもたちが指摘してくれたことが本当に大事なことなのだ。

     そして老婆心ながら、いやスポーツライターとしてあと1点だけ付け加えるならば、それは「多様性」を知る機会であり、「多様性」を尊重する場であるということだ。

     さまざまな競技にさまざまな人たちが取り組む。
     それぞれの個性を活かして、自分の得意な競技で自分らしさを発揮する。
     国や人種、民族が違っても、その多様性を認め合う場が五輪なのだ。

     子どもたちが見たいと言っていた競技もさまざまだった。
     サッカー、水泳、テニス、ラグビー、アーチェリー等々。

     みんな違って……、でもそれでいいのだ。
     さあ、日本選手の活躍を見届けよう!

    青島 健太 Aoshima Kenta
    昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
    慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
    同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
    5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
    オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
    現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
    2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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