スコアブックの余白

【スコアブックの余白】Vol.2 少年野球、選手が集まるチームの魅力とは?

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    ■積極的なSNSの発信、古き悪き慣習の排除に努めているか 

     

     全日本少年軟式連盟によると、この15年で約5000の学童チームが消滅している。ドジャース・大谷翔平投手の存在で萎んでいくチーム数に歯止めがかかるのではという期待はあるが、スポーツの多様化、保護者の負担、環境の問題で急速に減っているのは確かだ。

     野球チームは体験会やチラシ配りなどを通して、メンバーを募る。最近、取材した広島の学童野球チームによると募集に一番効果があるのは「口コミ」だという。子どもから子どもへ。「一緒に野球やろうよ」「〇〇くんが入っているから僕もやりたい」という流れだ。

     いくつかのチームを取材していると、体験会もチラシ配りもせずに、人が集まり、部員募集を停止しないといけないチームもあった。あるスタッフは「体験会なんてやる必要はない」「やらなくても人は集まる」と言っていた。その通りである。集まらないのには理由がありそうだ。

     集まる例の共通点は①公開している情報量が多いこと②保護者の負担が少ないことに挙げられる。①については、SNSを使った発信を積極的に行っていること。さらにその内容には、保護者から敬遠されそうな悪しき慣習は排除しているというものが伝わってくる内容だ。

    保護者には体験会以外の日程の視察を勧めたい

     

     指導者の暴言、暴力、過度な親の負担、不必要なルール、大人同士の関わり……これらのようなことが少年野球界では問題になっているが、それらが存在するチームがクリーンさを発信することは嘘になる。発覚すればすぐに情報は広がる。そのため、その疑念が拭えないチームの情報発信は活動報告だけに終始するだろう。

     ホームページがなかなか更新されていないようならば、新しいルールづくりに活動方針にトライできていない可能性もある。昭和、平成、令和と映る時代に変わり映えのしない指導、環境ならば置いて行かれてしまう。スマホ世代の親はそれくらい見抜くことはできる。

     保護者の方によく伝えているのは体験会に行くことがあったら、試合の日の活動や普段の練習も参加してから入団を考えることをお勧めしている。体験会はいいところを見せようとしているだけで。実際に入ったら違うとならないように、シチュエーションの異なる日をぜひ見てもらいたい。

     私が取材してきたチームで良い取り組みだなと感じたところ、ここに子どもを預けたいと思う人が増えれば野球人口の底辺拡大につながると思うチームは媒体を通じて紹介をしてきた。考え方の古さが嫌で、新しくチームを設立する動きも最近ではよく起きている。子どもが野球をやりたくてもどこに入れたらいいかわからずに諦めてしまうそうなる前に役立つ情報を発信していきたい。野球を報じる側の人間として、その目は常に磨いていきたい。

    楢崎 豊(NARASAKI YUTAKA)
    2002年に報知新聞社で記者職。サッカー、芸能担当を経て、2004年12月より野球担当。2015年まで巨人、横浜(現在DeNA)のNPB、ヤンキース、エンゼルスなどMLBを担当。2015年からは高校野球や読売巨人軍の雑誌編集者。2019年1月に退社。同年2月から5つのデジタルメディアを運営するITのCreative2に入社。野球メディア「Full-Count」編集長を2023年11月まで務める。現在はCreative2メディア事業本部長、Full-CountのExecutive Editor。記事のディレクションやライティング講座、映像事業なども展開。

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