アスリート街.comにコラムを書かせていただきます。私、野球専門Webサイト「Full-Count」のExecutive Editorの楢崎豊と申します。このたび、本サイトの理念に共感し、アスリートのキャリアを応援していきたいと思っています。
私も20年近く取材活動をしてきた中で、アスリートへのリスペクトの念を忘れずに、言葉を引き出してきました。サイトのコンセプトにあるように活躍するアスリートたちの実情、現役を退いた方達を取り巻く環境は思っている以上に厳しいことも目の当たりにしてきました。
例えばプロ野球の世界。NPBでは毎年、新人選手と入れ替わり、100人前後の選手がユニホームを脱ぎます。1軍で活躍した選手であっても、球団に指導者や職員として仕事のオファーがあるのは一握りです。プロになるくらいですから、幼少期から野球に時間を費やし、夢を叶えた選手たちですから、人よりも優れた能力を持っているのは当然です。
引退することになった選手たちの中には路頭に迷う人もいます。知り合いに経営者の方がいれば、救いの手を差し伸べてあげることはできるでしょう。でも、そのような関係性を持っていない場合、自分で仕事を見つけていかないといけません。
一方で、経営者側の意見を聞いていくと1・2軍問わず、プロ野球を引退した選手を社員として招きたい、という声もあると聞きます。理由は体力と根性があるからだと。体力と根性が無くて、プロになれた人はおそらくいないと思います。私はプロを目指す子どもたちに会うと「プロ野球選手というのは、地道な練習を何時間も何年も、同じように繰り返すことができる人がなれるんだよ」と取材してきた選手たちの共通点として伝えるようにしています。
根気強さは誰にも負けることはありません。過去にセカンドキャリアについてお話を聞いたことがある元巨人軍の名選手、岡崎郁さんは「どんな会社に入るにせよ、最初は小さな歯車として働くことがほとんど。最初は体力と根性で仕事を覚え、徐々に専門的な知識や技術を身に着けていけばいいのかもしれません」と話していました。
2軍監督や1軍ヘッドコーチ、スカウト部長などを歴任した岡崎さんは、ユニホームを脱いだ後、ある思いにも駆られていました。「僕はスカウト部長として選手たちのプロ生活の“入口”に立ち会い、2軍の指導者としては全員を1軍に定着させるつもりで教えました。しかし、実現できる選手は10人中1人くらい。“出口”でセカンドキャリアに向けて、もっと選手たちの力になってあげられないか──と当時から考えていました」、と、
プロ野球経験者を求めている企業側と、少ない“つて”を頼るしかない選手たちをつなげる役割を果たしたいと考えていました。中にはきっといい人材がいる。セカンドキャリアをバックアップする企業と元選手たちが集まる“街”にこのサイトはなっていくのではないでしょうか。
元横浜ベイスターズの岡本直也さんは、都内の一等地の焼肉店のオーナーとして、自ら厨房に立ちながら、お客さんを唸らせる料理を提供しています。プロボクサーと世界と戦った内藤大助さんも、ボクシングの認知向上に様々な活動をしています。まだまだ輝ける未来を応援していく情報発信のお手伝いをできればいいと思っています。
2002年に報知新聞社で記者職。サッカー、芸能担当を経て、2004年12月より野球担当。
2015年まで巨人、横浜(現在DeNA)のNPB、ヤンキース、エンゼルスなどMLBを担当。
2015年からは高校野球や読売巨人軍の雑誌編集者。2019年1月に退社。同年2月から5つのデジタルメディアを運営するITのCreative2に入社。野球メディア「Full-Count」編集長を2023年11月まで務める。現在はCreative2メディア事業本部長、Full-CountのExecutive Editor。記事のディレクションやライティング講座、映像事業なども展開。