「ゴルフに新時代の到来」
コロナ禍で多くのスポーツが厳しい環境に置かれている中、明るいニュースが無い訳でもない。
3密を避けて、新型コロナウイルスの感染拡大を防ごうという取り組みが、なかなか増えなかった競技者や愛好家をコースや練習場に向かわせることになっているようだ。
「ゴルフ」である。
懇意にしている経営者とのメールのやり取り。
毎週のようにゴルフをプレーする彼に「シニアプロでも目指しているのか?」と冗談半分でメールすると「最近は接待の席が減った分、みなさんゴルフをやりましょうと言ってくるんですよ」との返信。
そう、銀座や赤坂、六本木あたりで飲んでいたおじさんたちが、今まで以上にラウンドする機会が増えているのだ。
日本経済新聞では、こんなデータも紹介されている。
5月にはビジター料金が前年同月比で17%下がったが、8月には4%安まで持ち返したという。1人当たりのプレー回数が増えたのと、20代を中心にした若い世代のラウンド数が倍増している。
ゴルフ場予約サイトを運営するゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)によると一時落ちたビジター料金も6月以降回復傾向にあり、8月のGDO経由の来場者数は前年同月比の27%増で過去最高を記録しているとのこと。
20代の若者の参加が倍増していることについてGDOの担当者は、
「値下がりでプレーしやすくなったことに加え、野外スポーツでコロナ下でも比較的安全とみられていることも影響していそうだ」と分析している。
経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、7月の来場者数は9.1%増の176万人と、5か月ぶりに前年を上回っている。
また練習場も盛況で、全日本ゴルフ練習場連盟によると、8月9月の来場者はこちらも前年を上回っているそうだ。
まさに「災い転じて福となす」的な状況が起こっているのだ。
特に、若い世代の参画は、ゴルフ界にとっては願ってもないチャンスだ。これまで年長者のスポーツというイメージが強かったゴルフだが、若者の方からゴルフに歩み寄ってきたのだ。
ビジター料金の下落の他、「スループレー」の増加やゴルフルールの改正(ピンを抜かずにパッティングできる等)も要因としてあるようだ。
クラブハウスを「リモートワーク」や「ワーケーション」の場として提供しようという動きもある。ひと言でいえば、近寄り難かったゴルフ場が、身近になってきたのだ。
ランチを挟んで、優雅に丸1日のプレー。
キャディーを付けての豪華なラウンド。
クラブメンバーによる上質なメンバーシップ。
ゴルフには、素晴らしいステータスがある。
しかし、若い人たちは、もう少しカジュアルにプレーしたかったのかもしれない。
それがコロナの影響で、結果的に多様で柔軟性のあるプレー&ゴルフライフが可能になったのだろう。
男女のプロツアーでも若手の躍進が止まらない。
女子の原英莉花(21歳)や古江彩佳(20歳)が優勝を重ねれば、男子もルーキーの金谷拓実(22歳)がプロ3戦目で優勝を飾った。本コラム33号で取り上げた笹生優花(19歳)もアメリカ女子ツアーでの優勝を目指している。
始まっている若者の動きは、「ゴルフ新時代」を予感させる。
まさに令和の断面だ。
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。