令和の断面

【令和の断面】vol.139「自由な髪形でスポーツをしよう!」

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    「自由な髪形でスポーツをしよう!」

     些細なことだが、大事なこと。
     高校生の頭髪についてである。
     正月、高校サッカーを見ていて考えた。

     おもしろかった。
     特に準決勝。

     ■神村学園(鹿児島)対岡山学芸館(岡山)
     ■東山(京都)対大津(熊本)

     いずれもPK戦にもつれ込む大熱戦。
     岡山学芸館と東山が9日の決勝に進み、岡山学芸館が岡山県勢としても初の優勝を飾った。

     このレベルの各チームには、Jリーグ内定者のスター選手が必ずいるものだが、岡山学芸館はこの時点でプロになる選手が一人もいない雑草軍団。
     それでも43歳の高原良明監督は胸を張って言った。

     「いろいろなチームに優秀な選手がいる。うちは代表経験のある選手もいない。でも、サッカーは個人スポーツではなく、チームスポーツ。選手が証明してくれた」

     敗れはしたものの準優勝の東山からも良い話が聞こえてきた。
     こちらも紹介しておこう。
     51歳の福重良一監督は、試合中や練習中に選手が手に取る給水用ペットボトルを「立てて置く」ように指導している。これを教え子である日本代表・鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)がドイツでも実践しているというのだ。

     「ペットボトルは立っている方が取りやすい。そういう気遣いを持てる余裕がない選手に、いい選手はいない」

     さて話が頭髪から逸れてしまったが、高校サッカーを見ていると、選手たちの髪形がみんな自由で、伸び伸びとサッカーをやっている。
     「全員揃って丸刈り」みたいな文化がまったくないのだ。

     準決勝で姿を消した神村学園の選手たち、とりわけドイツ1部ボルシアMGに加入する福田師王選手など、高校生とは思えないほど大人びた容姿をしている。プレースタイルも髪型も格好いいのだ。

     スポーツをする高校生の髪形については、こんなことが長く言われている。
     「髪形に気を使っているようでは良い選手になれない」
     正論だと思う。
     「髪の毛に気を使う暇があたら、もっと練習しろ!」
     これも指導者が言い続けていることだろう。

     しかし、サッカー選手としてどんな髪形をすれば良いのかが分からないような選手では、良い選手になれるはずがない。手にした自由をどうやって活かすか。それは選手として自分の特徴をどう活かすかということと同じセンスで対処すべきことだ。自分で自分をプロデュースする。プレースタイルも髪の毛も。
     高校時代に学ぶべきことは、技術より前にまずそのことなのだと思う。だからペットボトルを立てて置けることは、すべてにつながるのだ。何をやるかが、自分をつくる。

     説教臭いことを言う気は毛頭ない。
     スポーツ選手の髪形など、どうでもいいのだ。
     好きなようにやればいい。
     ただ、そうはいかない現場がまだまだあることを憂いているのだ。
     その意味で正月の高校サッカーは見ていて実に気持ち良かった。
     スポーツは、自由を謳歌するためにあるのだ。

    青島 健太 Aoshima Kenta
    昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
    慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
    同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
    5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
    オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
    現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
    2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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