「ガッツポーズはガッツ石松さんが元祖」
始まった統一地方選挙。
その前半戦が終わり、いよいよ後半戦に突入していく。
近年はSNSを活用した選挙戦が重要になっているので、候補者は行く先々で写真を撮る。応援の弁士が来たりすると必ずカメラの前で並ぶ。
この時にただ記念写真のように直立の姿勢では面白くないので、拳を身体の前で握りしめて「やるぞ!」というポーズを取る。
いわゆる「ガッツポーズ」である。
そもそもはスポーツ界で始まった闘志を見せるこのポーズだが、今では選挙になると日本中の候補者がこのポーズで写真に納まっている。
「ガッツポーズ」の「GUTS」は、英語で「根性」や「度胸」「気概」の意味を持つ。だから、それを示すポーズが「ガッツポーズ」だと思っている人が多いだろうし、選挙の候補者もその意味で意気込みを示すつもりでガッツポーズを作っているはずだ。
しかし、本来の「ガッツポーズ」の由来は、ちょっと筋が違うのだ。
30年以上スポーツの取材者をしてきたので、私はこの意味を知っていたが、4月11日の日刊スポーツに大きくその由来が報じられていたので、詳細が知りたい方はそちらをチェックしていただきたい。
簡単に書くとその始まりはこういうことだ。
1974年4月11日。世界タイトルマッチに勝ったリングネーム「ガッツ石松」さんが、喜びのあまりコーナーのロープに飛び乗り両手を高々と上げた。その写真を大きく掲載した翌日のスポーツ新聞が「ガッツポーズ」という見出しを打った。
そこから両手を突き上げたスポーツ選手のポーズを「ガッツポーズ」と呼ぶようになったというのだ(ボウリングのストライクを取った後のポーズから来たという説もある)。
つまり本来は喜びのポーズであり、闘志を見せるポーズではないのだ。
しかし、今ではすっかりガッツを見せるためのポーズとして定着し、その由来も「ガッツ=石松」ではなく、「ガッツ=闘志」で認識されている。
実は、そのガッツ石松さんの選挙戦を取材したことがある。
1996年に行われた衆議院選挙にガッツさんは東京第9区から立候補した。
駅頭に立って、行き交う群衆と戦っていた。
相手が誰なのかが分からない。
敵か味方か?
繰り出すパンチの代わりに、頭を下げて丁寧にお辞儀をしていた。
しかし、残念ながら元祖のガッツポーズは見られなかった(落選)。
今は、スポーツにも選挙にも「ガッツポーズ」がつきものだ。
共通するのは、どちらも勝ち負けを決める勝負の世界ということか。
ただし、選挙のガッツポーズは、写真撮影のためにするものだが、スポーツのガッツポーズは思わず出てしまう感情のほとばしりだ。
その意味では、スポーツのガッツポーズがたくさん見られる戦いを各競技で期待しよう。
個人的には、どんなにすごいことをやってのけても、大袈裟に喜ばず、クールにしている選手が好きだな……(笑)
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。