「大谷翔平の進化を見た」
永田町の参議院会館には、朝5時過ぎに来ている。
毎朝4時頃には起きるので、シャワーをして、日本茶を飲んだら、そのまま議員会館に向かう。その方が無駄な時間がないし、自分のペースで一日が始まるからだ。
普通なら新聞を読んだり、資料に目を通したりするのだが、この日(5月22日)は、5時からBSでやっている「エンゼルス対ツインズ」が気になって大リーグ中継を見ることにした。
久しぶりに大谷翔平のピッチングが見たくなったからだ。
残念ながら、国会議員になってからテレビを見ることがほとんどなくなったが、
この時間(早朝)のゲームなら、何の気兼ねもなく観戦できる。
前日には、打者として11号ホームランを打っており、打撃の方も順調なスタートを切っている。しかし、それ以上の安定感を見せているのが、今シーズンの大谷のマウンドだ。この日まで5勝1敗。ローテーションを守りながら、ピッチャーとしてもチームを支えている。
今シーズンから導入されたピッチクロック(捕手からボールを受けたら15秒以内に投げなければいけない。ランナーがいる時は20秒以内)の影響もあって、開幕当初は、あわただしく投げている印象を受けた。しかし、この日のマウンドは落ち着き払っていて、この新しいルールも十分にこなしていた。
久しぶりに見た大谷のピッチングは、「脱力」と「省エネ」が見事に機能していた。
まず、ランナーがいなくてもセットポジションで投げる大谷のフォームから力感は感じられない。軽く投げている訳ではない。80パーセントくらいの力でスイスイ投げることを意識しているのだろう。力が入るのは、時折投げるフォーシームの時だけだ。この時は、「おりゃー」と声が出たりする。
それ以外は「脱力」の効いた「省エネ投法」に徹している。
それを物語るのが、彼が投じる球種だ。
カウントを稼ぐのは、ほとんどが変化球だ。
この日もカットボールが冴えていた。それ以外にも、スライダーやツーシームで簡単にストライクが取れる。最後はスプリットもあれば、フォーシームもあって選択肢は豊富だ。それゆえに相乗効果ですべての球種が有効になる。
このピッチングスタイルを私は、経験から来る「進化」と呼びたい。
彼の役割は、ノーヒットノーランや完全試合をやることではない。シーズンを通してコンスタントに相手を抑える。たとえ失点しても最少失点で切り抜けて、チームに勝利をもたらす。
一番大切なことは、1年間ローテーションを守り抜いて健康に投げ続けることだ。
そのために何をすべきか?
その答えが、この日のピッチングであり、今シーズンの大谷のスタイルなのだ。
WBCでは160キロ越えのボールを連発していたが、そんな投球をレギュラーシーズンですることはない。もちろんここ一番では全力の速球も投げるが、それ以外は、いかに「脱力」して「省エネ」に徹するかがテーマだ。
この日の大谷は、打線の援護が遅れ失点1で勝ち投手になれなかったが(チームは3対2で勝利)、十分にその役割を果たす内容だった。
このピッチングなら、確率的にも相当勝てるはずだ。
去年は15勝9敗。
今シーズンは20勝と予想しておこう(笑)。
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。