令和の断面

【令和の断面】vol.165「大谷翔平を支える準備力」

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    「大谷翔平を支える準備力」

     大谷翔平のバットが止まらない。
     日本時間18日のヤンキース戦(@アナハイム)。
     7回の第4打席で同点の35号2ランを放ち、これで3戦連続、延長10回のサヨナラ勝ちを呼び込んだ。
     前シリーズのアストロズ戦でも逆転につながるホームランを連発し、チームの原動力そのものになっている。

     今シーズンから1インチ(約2.5センチ)長くしたバットが、完全に自分の物になっている。おかげでアウトコースのボールもセンターに放り込む。
     そうかと言ってインコースのボールも持ち前のバットコントロールの巧みさで、窮屈に打つことはない。
     つまりピッチャーにとっては、投げるところがないのだ(笑)。

     まったく呆れるほどのすごさだが、これを彼の才能だけで片付けてしまってはいけないだろう。

     チカラを発揮するための準備。
     これがしっかりあるから、コンスタントに打ち続けることができるのだ。

     彼の日常で驚かされるのは、遠征先でもほとんど街を出歩かないという。
     何度も訪れているニューヨークでさえも、ほとんど知らないらしい。
     街に繰り出すようなこともなく、ゲームが終わればすべての時間を休養に当てているのだ。
     聞くところによれば、睡眠は10時間を欠かさないという。
     このくらいの自己管理ができなければ、二刀流はできないのだ。
     もちろん大谷選手も、気分転換や日常に刺激が欲しいこともあるだろうが、考えてみればメジャーの試合ほど、刺激に溢れている場所はないだろう。
     そう思えば、試合以上に興味を覚えることはない。

     すべてをかけて野球をやっているのだ。

     もうひとつ彼が発揮しているスタイルは、とにかく攻撃的に打席に立っていることだ。トライ&エラーを恐れない。
     とにかく初球からスイングを仕掛けている。
     様子を見ながら、探りながら打ちに行くようなことがない。
     大谷の特徴は、初球のホームランが多いことだ。
     1球目で仕留める。
     この姿勢は、2ストライクに追い込まれても一貫している。
     中途半端に当てるようなバッティングはしない。
     だから2ストライクからのホームランも多い。

     いくら才能があっても、こうした姿勢、考え方がなければその能力を生かせないはずだ。

     しっかりと休養を取って、最善のコンディションを用意する。
     そして、始まったゲームにおいては躊躇(ちゅうちょ)することなく1球目から襲い掛かっていく。

     失敗を恐れず、その失敗を活かしながらチャレンジしていく。

     こうした姿勢は、野球だけにとどまらず、私たちの日常でも学ぶべきことかもしれない。

     日米を問わず、多くのファンが大谷翔平に魅了されている。
     それは豪快なホームランや圧倒的なピッチングだけでなく、彼がグラウンドで見せる喜怒哀楽の表情であり、その積極的なプレースタイルそのものに共感している部分も大いにあるだろう。

     さあ、今日の私も1球目から積極的にスイングしていこう(笑)。

    青島 健太 Aoshima Kenta
    昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
    慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
    同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
    5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
    オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
    現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
    2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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