「新時代を作るのは若い力」
新しい時代を作るのは、いつも若い人たちだ。
沖縄で開催されたバスケットボール男子W杯の1次リーグ。
日本代表は初戦のドイツには敗れたものの、第2戦のフィンランド戦で歴史的な勝利をおさめて、新しい時代の到来を内外に知らしめた。
世界ランキング36位の日本に対し、フィンランドは24位。
格上の相手であるばかりか、日本は世界の舞台で17年勝っておらず、ヨーロッパのチームにはまだ1度も勝ったことがない。初戦のドイツにも大差で敗れ(81対63)、ヨーロッパ勢との力の差は依然として大きいと思われた。
始まったフィンランドとの試合も、第1クオーターこそ日本が22対15と上々のスタートを切ったが、第2クオーターであっさりと逆転され、第3クオーターでは最大18点のリードを許すまでに点差が広がった。格上のチームを相手にこの差を挽回するのは容易なことではない。いつものように善戦むなしく大敗という流れかと思われた。
ところがこの悪い流れを一気に変えたのは、共に22歳、チーム最年少の河村勇輝(25得点9アシスト、横浜BC)と富永啓生(17得点、ネブラスカ大)の二人だった。
まずは富永が難しい体勢から3ポイントをどんどん決めていく。その得点で息を吹き返してきた日本は、本来のリズムを取り戻していく。
トム・ホーバスHC(ヘッドコーチ)の掲げる3つの戦略。
・3ポイント
・ハイスピード
・粘り強いディフェンス
これが良い形でどんどん発揮されるようになる。
富永が3ポイントシュートを次々に決めるとフィンランドディフェンスのマークが外に向かっていく。すると意識の薄くなった内のスペースを狙って河村が自ら持ち込んでシュートを決める。この二人のシュート力に手を焼いたフィンランドは、防戦一方となり第4クオーターだけで35点を失点(15得点)した。
そしてゲーム終了のブザーが鳴ると、日本は98対88で歴史的な勝利をあげたのだ。
流れを変えた河村と富永に共通するスタイルは、失敗を恐れずどんどんシュートを打っていく攻撃性だ。
河村は去年、ホーバスHCのアドバイスでプレースタイルを大きく変えた。
それまではアシストに徹した選手だった。味方に良いパスを出す。そこに拘ってきた。3ポイントも打てるのに狙わない。そんな河村にホーバスHCが言った。
「世界で通用するには、いつでも点を取れる選手じゃないといけない」
この言葉で目覚めた河村は、自らもシュートを打つ攻撃的な選手に変貌を遂げる。身長172センチと小柄な選手でありながら、昨シーズンは日本出身選手としてリーグトップの1試合(19.5得点)をあげ、アシスト王(8.5)にも輝いた。
富永も自分の仕事がシュートを打つことだと心得ている。
「あれが自分の役割で、自分がこのチームにいる理由」と17得点を振り返った。
「攻撃は最大の防御なり」という言葉もあるが、若い二人の攻撃性がチーム全体に伝播し、日本代表は第4クオーターに起死回生の得点ラッシュを見せた。
ホーバスHCも「こんな試合、経験したことがない」と言うほどの大逆転。
日本のバスケットが、ヨーロッパの強豪を倒した一戦。
その原動力は、怖いもの知らず、若い選手の攻撃性だった。
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。