令和の断面

【令和の断面】vol.64「阪神佐藤輝明 三振を怖がらないのも才能だ」

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    「阪神佐藤輝明 三振を怖がらないのも才能だ」

     好調阪神がセ・リーグを突っ走っている。
     これを記している4月20日時点で、15勝4敗、2位巨人(11勝6敗4引き分け)に3ゲーム差をつけて首位を快走、しかも7連勝中だ。
     
     連勝の始まりは9日の横浜DeNA戦。
     先発の藤浪晋太郎(27歳)が好投し9対2で圧勝したのがスタートだったが、チームを勢いに乗せたのは、ルーキー佐藤輝明(22歳)の場外ホームランだろう。打った瞬間にホームランとわかる打球は、横浜スタジアムの右中間スタンドをはるかに越えて、場外へと消えていった。佐藤にとっては、これが今シーズン3本目のホームランだった。

     筆者は、シーズン前に広島のラジオに出演し、新人の佐藤がホームランのタイトルを取るかもしれないと言及した。開幕前なのでご祝儀的に盛り上げたいという気持ちが働いていたのは確かだが、佐藤の長打力については、開幕した今の方がさらに期待が高まったと言えるだろう。

     なぜ、ルーキーにそこまで惚れ込んでいるかと言えば、とにかく三振が多いからだ。20日時点での三振は、両リーグトップの30個。セ・リーグの後続は、みな20個前後だ。今のところぶっちぎりで三振が多い(笑)。
     それは誰もが感じていることで、在京のあるラジオ局がナイタークイズの中で「今日の佐藤は、何個三振するか」をその日の問題にしようとしたほどだ(クレームが多くて中止になった笑)。
     
     もちろん三振そのものは、バッターにとって名誉なことではない。
     ただ、不名誉なことかと言えば、決してそうではない。
     
     まず、打席に立たなければ三振もできないのだ。そして多くの三振をしながらもそれでも出場の機会があると言うことは、三振を超える何かを期待させるものがあると言うことだろう。
     それが佐藤の場合は、もっともわかりやすい選手だ。
     つまりいくら三振をしていても、当たった時にはホームランの魅力を秘めているからだ。

     佐藤を見ていて思い出すのは、いまや日本を代表する左バッターとして活躍するソフトバンクの柳田悠岐(32歳)だ。
     彼も若いころは、三振の多いバッターだった。それもそうだ、2ストライクに追い込まれても平気でフルスイングを仕掛けてくるからだ。
     そんな駆け出しの柳田に聞いたことがある。
     「追い込まれてからスイングを変えることはないのか?」と。

     すると予想もしない答えが返ってきた。
     「コンパクトに当てにいこうとすると、タイミングが取れなくて逆にバットが振れないですよ。だからどんな時でもフルスイングを心掛けています」

     つまり、軽く振ろうとすると自分のスイングができなくなると言うのだ。
     これについては、佐藤も同じようなことを言っている。

     「求める理想の打球はホームランなんです。そういう意味でもしっかりバットを振るというのを大事にしています」

     そう、追い込まれても自分のスタイルを変えずフルスイングができること自体がある種の才能なのだ。
     誰もが結果を求めて、追い込まれるとコンパクトなスイングを心掛ける。
     そこを自分の信念を貫いて、あくまでも強く振ることに拘っていく。
     そうでなければホームランバッターの道を歩けないのだ。

     柳田も年齢を重ねるごとに技術を高め、追い込まれてからのバッティングも身に着けている。佐藤もいずれはそうなるだろう。ただ、一番大切なことは、三振を怖がらずに(小さな結果を求めずに)フルスイングに徹することができるかどうかと言うことだ。
     佐藤は、その気概と才能を持っている。
     その打席での攻撃的な姿勢が、ルーキーながらチームにも良い影響をもたらしているとも言えるだろう。
     久々に現れた「三振かホームランか」の怪物だ。

    青島 健太 Aoshima Kenta

    昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
    慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
    同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
    5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
    オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
    現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。

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