メジャーリーグで不思議な形のバットが話題を呼んでいる。
すでに新聞やテレビなどで紹介されているが、通常のバットに比べ先端が細くなっているバットだ。
英語名は「トルピード」、日本語では「魚雷バット」と訳されている。
本物の魚雷は見たことがないが、魚雷のように先が細くなっているので、そう命名されたらしい。
これまでのバット(一般的なもの)は、グリップのところが細くなっていて先端に向かって徐々に太くなっていく形をしている。ルール上の長さは、42インチ(106.7センチ)までと決められているが、現代の選手たちが使っているのは、概ね33インチから36インチくらいのものだ。日本では34インチが一番オーソドックスな長さと言えるだろう。
では、太さの規定はどうなっているかと言えば、最大径が2.61インチ(6.6センチ)と謳われているだけで、その形は規定されていない。
つまり長さと太さが規格に合っていれば問題ない。
「トルピード」はルール違反ではなく、自由に使えるのだ。
そしてこのバットが大きな注目を集めているのは、これを使うヤンキースの選手たちがホームランを量産しているのだ。
開幕から3連勝し15本のホームランを打ったヤンキースの打撃陣。その中でこれを使うボルピ選手やチザム選手がホームランを打ちまくっているのだ(開幕4試合でボルビが3本、チザムも3本)。この他ヤンキースでは、ゴールドシュミット選手やウェルズ選手も「トルピード」でホームランを打っている。
このバットを開発したのは、去年までヤンキースでアナリストを務めていたアーロン・リーンハート氏(現マーリーンズスタッフ)だ。リーンハート氏は、元マサチューセッツ工科大学の物理学教授で、選手たちにバッティングの話を聞く中でこの形を思いついたというのだ。
バットの先端が太くなっているのに、実際に打つ場所(芯の部分)は、もっと手前側を使っている。それならボールを捉える芯の部分を一番太くすればいいのではないか。「トルピード」を使っている選手たちによると、先端が軽くなった分、操作性が高まりスイングスピードも上がったと言うのだ。
新しい形のバットがバッティングを変える?
このバットの存在をかぎつけて、他チームの選手も続々とこのバットを試しているとの噂だが(ドジャースのフリーマン選手も試している)、一方でヤンキースのジャッジ選手やドジャースの大谷翔平選手は、このバットを使っていない。
ホームラン王のジャッジ選手は「この数年間、結果を出している。違うバットを試す理由はない」と語っている。
さて、この魚雷バットが野球界に打撃革命を起こすのか?
もちろん日本のプロ野球でも、誰かがこれを使い出すことだろ。
魚雷バットが一気に広がるかどうか?
その普及は、日米のバッターたちにもっとも影響力のあるジャッジと大谷がどちらを選ぶのかにかかっているのかもしれない。
令和の断面