令和の断面

vol.249 父が偉大だと大変なんです

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     女子プロゴルファー工藤遥加選手が、プロ15年目にして初優勝を果たした。
     アクサ・レディース最終日(30日)、この日1打差3位スタートの工藤選手は、5バーディー、ノーボギーの67で回り、2位小祝さくらに2打差の通算10アンダーで逆転優勝を飾った。
    
     優勝インタビューでは「優勝を意識すると緊張するので、絶対に見ないと決めていたのに、16番のグリーン上で目に入ってしまい、そこから緊張した」とギャラリーの笑いを誘った工藤だったが、インタビューが始まった直後は、こみ上げる思いで「本当に良かった」というのが精一杯だった。
    
     工藤遥加、この名前を聞いてすぐにピンとくるのは、プロ野球ファンかもしれない。
     父親の工藤公康氏は、ご存じ通算224勝をあげた球界のレジェンドだ。
    
     2011年にプロテストに一発合格。当時は大きく騒がれた。
     兄の工藤阿須加氏も俳優として活躍。そして父も現場に復帰。2015年から21年まで福岡ソフトバンクホークスの監督を務め、常勝ホークスを作り上げた。
     工藤家が、野球界、芸能界、ゴルフ界でも大暴れするのだろうと思われた。
    
     ところが遥加プロの朗報がなかなか届かない……。
    
     父親がプロ野球の大投手。
     その子どもであることの難しさを彼女はこう語った。
    
     「ふがいない娘で申し訳ないという気持ちだった……」
    
     それは公康氏がソフトバンクの監督をやめた時だった。
     母親が公康氏にこれからやりたいことを紙に書いてほしいというと、父である公康氏は「遥加を勝たせてあげたい」と書いたそうだ。
     それを見て遥加プロは、「絶対に勝ってやろうと思った」そうだ。
    
     自分の甘さに気が付いたのは、2年前のオフに女子ソフトボール界の強豪、ビックカメラの合宿に参加した時だった。
     そこで聞いた言葉が彼女に刺さった。
    
     「失敗するのが格好悪いのではなく、チャレンジしないのが格好悪い」
    
     父が偉大過ぎると、その名声を汚してはいけないと思い、何事も慎重になってしまうのかもしれない。それが失敗を恐れる気持ちにつながり、どこかで本来の自分を出せなくなってしまう。
     そこに遥加プロの難しさがあったのだろう。
    
     これは、遥加プロと公康氏の関係だけでなく、どの世界でもある偉大な親と二世の関係性なのだろう。
    
     子どもは子どもで悩むのだ。
    
     しかし、彼女が手に入れた発想(姿勢)は、とにかくチャレンジすることだった。
     怖気づいて尻込みすることの方が格好悪い。
    
     工藤遥加が初優勝までに要した試合は267試合、プロになってから4991日目の快挙だった。
     もう悩むことはないだろう。
     これから工藤遥加の快進撃が始まる。
    
    
    

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