令和の断面

vol.245 大谷が見せた新スライディングに学べ

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     ドジャース・大谷翔平のすごさは、経験したことや学習したことをすぐに消化し、次のプレーに活かせることだろう。
    
     今は、ノーステップで打っている大谷だが、アメリカに渡った1年目のオープン戦では、右足を大きく上げて一本足で打っていた。メジャーリーグのピッチャーたちが投じるボールに負けないように、自らも足を上げて体重移動を使って打っていたのだ。しかし、この打ち方だと身体のブレが大きくメジャーの動くボールに対処できない。
    
     オープン戦では、結果を残すことができなかった。
     しかし、ここからの変化が大谷のすごさだった。
    
     いざシーズンが開幕すると、大きく足を上げる打ち方をやめて、現在のような右足の踵を上げるだけのタイミングの取り方に変えて、環境に見事に順応して見せたのだ。
     そしてその打ち方で、ここまで彼が残している打撃成績は周知の通りだ。
    
     そんな大谷が、またまた新しい変化を見せた。
     日本時間3日に行われたホワイトソックス戦。
     「1番・DH」で出場した大谷は、4回無死からの第2打席で安打を放ち1塁に出塁する。
     次打者・Tヘルナンデスの当たりは三ゴロ。
     この時、大谷は二塁ベースへ滑り込む。
    
     嫌なシーンが蘇ったのは、去年のワールドシリーズだ。2塁ベースに滑り込んだ大谷は、地面に着いた左肩を脱臼。その後、試合にはなんとか復帰したが、痛めた肩は、手術を余儀なくされた。
    
     この経験をどう活かすのか。
     大谷はスライディングも改良していた。
     2塁に滑り込む大谷は左手を左胸に付け、右手を上げながら滑る「新スライディング」を披露したのだ。これなら肩を脱臼する心配がない。
    
     二刀流での復帰を目指す大谷にとって、最大の敵はケガをすることだ。ピッチャー大谷は、打者としても出場する。普通の投手なら「DH制」で打席に立つことはないが、大谷は打者として塁上を疾走し、盗塁も企てる。スライディングでのケガは絶対に避けなければならないのだ。
     その強い意識がスライディングも改良させたのだろう。
    
     ブルペンでの球数も徐々に増え、試合のマウンドに上がる日も遠くない。スライディングも実践向けに改良し、二刀流への準備は着々と進んでいると言えるだろう。
    
     と、この原稿はここで終わってもいいのだが、せっかくだから日本の野球界にに警鐘を鳴らしておこう。
     プロ野球ではあまりないが、高校野球では1塁へのヘッドスライディングを時々見る。これが甲子園の試合だったりすると「気持ちが現れています」等の賛辞が送られたりする。
     しかし、これはもうそろそろやめた方がよい。
     1塁ベースに乗り上げて肩を脱臼することもあれば、高いボールを補球するために跳び上がった1塁手に指を踏まれたりする可能性もある。
    
      これはルールを作って「1塁ベースへのヘッドスライディングを禁止」にしてもいいくらいだと私は思っている。そうでなければ、みんなやってしまう。球児たちの気持ちはわかるが、これは非常に危険なプレーだということを本稿で強調しておこう。
    
      それが大谷選手のケガから学ぶ教訓でもあるだろう。

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