令和の断面

vol.237 箱根駅伝に学ぶ広告戦略

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     正月は「箱根駅伝」と決めている訳ではないが、元日に社会人の「ニューイヤー駅伝」を見てしまうと、その流れで2日、3日も駅伝に吸い寄せられるように「箱根駅伝」をガッツリ見てしまう。
    
     今年の正月は東京を離れていたのでテレビ観戦だけとなったが、東京の仕事場は1区(10区)のコースまで徒歩5分ほどのところにあるので、仕事場にいれば必ず沿道まで応援に行ってしまう。
     特に復路の10区は、最後の力を振り絞ってゴールの大手町を目指すランナーたちに思わず声を掛けてしまうことになる。
    
     正月から頑張っている人に元気をもらう。
     「もう少しだ、頑張れー」と声を掛けているのは、もしかすると、それは自分自身へのエールなのかもしれない。
     箱根駅伝の没入感は、きっと走っているランナーと自分自身をだぶらせて見てしまうところにあるのだろう。
    
     と言うことで、今年も箱根駅伝に完全にはまった正月になってしまったが、書こうと思っているのは総合優勝を果たした「青学」の強さではない。
    
     今回気になったのは、各大学のユニフォームに付けられた広告(スポンサー)だ。世界陸連でユニフォームの広告規定が改訂されたのが2019年12月。日本国内での適用は2020年3月から始まった。
    
     早速2021年の箱根駅伝から広告を胸に付けて各大学が走り始めた。これも実は青学の原晋監督が強く要望してきたことだ。
     今回の箱根駅伝では、ほとんどの大学が広告を付けて走っていた。
    
     ちなみに優勝した青学は「妙高市」と「水上村」の2つのマークを付けていた。
     ルールでは「40平方センチ、高さ5センチ以内」となっていて、当初は1社だけの掲載だったが、今では2社の広告が大勢だ。おそらくルールの大きさ(40平方センチ)を二分して掲載しているのだろう。
     青学は自治体の広告だが、他大学は寝具メーカーであったり、食品メーカーだったりさまざまな広告が存在している。
    
     箱根駅伝は、正月2日と3日に朝から約6時間連続で放送されている。この間。各大学のユニフォームはテレビに映り続け、これを広告費換算すると十数億円にも上ると言われている。
     それでも各大学は、大企業ではなく日ごろお世話になっている自治体や長い間サポートしてくれているメーカーと契約を結んでいる。正確には分からないが、それは数百万円規模のようだ。
    
     アマチュアの学生スポーツにとっては、これでも大きな収入であり、活動費に充てられている。
    
     これまで日本のスポーツ界は、スポーツを通じて収入を得るということに消極的だったが、どんなスポーツでも活動にはお金がかかる。
     原監督は「競技は、『勝利』と『資金』と『普及』の三要素によって好循環が生み出される。ようやくこの時代が来た」と言っている。
    
     例えば、駅伝と同じレベルのテレビ露出を考えると高校野球や高校サッカーなどがある。また高校生のバレーボールやバスケットボール、ラグビーなどもテレビ放映されている。もちろん高校駅伝も人気がある。
     高校生のスポーツでも工夫次第(しっかりとしたルールを設ける)で活動費を捻出できたりするはずだ。
    
     課題は、スポーツの魅力をどうやって最大化するかと言うことだ。
     箱根駅伝の取り組みを他のスポーツも見習っていく。
    
     スポーツにはまだまだ可能性が潜んでいる。
    

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