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島孝明#3
「育成契約打診も自分の道へ 元ロッテ・島孝明が選んだ大学進学」

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    大学生になった元ロッテ右腕 島孝明が考える未来(インタビュー全3回) #3
    2019年限りで現役を引退した元ロッテの島孝明投手は、高校(千葉・東海大市原望洋)時代から注目を浴びる右腕だった。21歳の若さで現役を引退し、大学に進学することを決断した。國學院大学に進学し、今年からは慶應大学大学院に在籍。将来的にはまた違った形でプロ野球界で活躍することを夢見ている。
     

    ■新しい野球の夢「アナリスト」

    ――プロの世界では「戦力外になるかもしれない」という雰囲気を自分自身が感じると聞いたことありますが、実際はどうでしたか?

    「なんとなくはありましたね。9月くらいになると、そういう感じにはなります。チームメート内でも話題に上がります。自分もぼちぼちかなという話にはなりますね。」

    ――10月または11月ぐらいから球団からの電話が鳴るんですか?

    「僕が受けた電話は、シーズン終わった直後ぐらいです。その時はグラウンドにいたので、「ちょっと話があるから」みたいなことを球団の方に言われました。(ファームの教育リーグの)フェニックスリーグが控えていたタイミングでしたね。」

    ――話の内容はどのような中身だったのですか?

    「育成契約の打診がありました。フェニックス・リーグにも帯同してほしいと言われました。自分の思いとしては、育成契約を出しされましたけど、フェニックス・リーグには行かないものだと思っていました。 そこでゆっくり考えようかなと思っていた。でも行くことになったので、行きながら考えるか、と思いました。当時1軍の投手コーチだった吉井さんも来るということになって、そこで一緒に練習も付き合ってくださって、今後のことを話させてもらいましたね 。」

    ――今後の話とは?

    「自分はここで1回引退をして、大学に行こうと思ってますと伝えました。でも吉井さんからは「もう1年やって今後の準備を進めるのでもいいんじゃないか?」と言っていただけました。確かにそれはそれでいいかなと思ったんですが、最終的に自分が決めたんだったらそれでもいいんじゃないかとも思いましたね。」

    ――最終決断は大学進学だった。

    「その当時、プロでやっていけるのかなと、自信がなくて。 なので、まだ20歳とか21歳でしたし、今後のことを考えた時に、思い切ってシフトチェンジした方がいいんじゃないかなと思いました。」

    ――一般社団法人日本プロ野球選手会が大学側と協定を締結したセカンドキャリア特別専攻という権利を使ったというのはニュースで見ました。

    「そうですね。プロ野球選手が引退する時に得られる権利のひとつです。大学が受け皿になるという提携をしていて、高卒で引退した選手に対して大学進学を与えるという制度でした。学費の負担もしてもらえます。こういう制度があることを現役中から知っておくのもいいかなとは思います。」

    ――島さんはそれを何で知りましたか?

    「資料で知りました。 教職免許、体育の教職免許も取れると聞いて、いいかなと思いました。僕以外にも何人かこの制度を利用して大学生になっています。」

    ――國學院大学での学部は?

    「人間開発学部 健康体育学科です。各大学の教育や教養学部のような種類だと思います。特段、これを勉強したい!というのは、なかったんですけど大学に入っていろんな世界を見てみたいというのがあって一番でしたね。」

    ■大学入学もすぐにピンチ…

    ――ただ、入学のタイミングで新型コロナウイルスが蔓延してしまった。

    「オンライン授業でした。初めての大学生でしたので、わからないなりに頑張ったなって思いはあります。ノートの書き方とかも知らないし、周りに友達がいるわけでもない。全部一人でいろんなこと調べてどうするかなど、いろいろと培った時でした。」

    ――國學院大学で学んだことは?

    「主にスポーツサイエンス、バイオメカニクスの分野ですね。人の運動とかを数学とかで明らかにしていくというようなところを重点的にやっていました。」

    ――そのような分野に興味があったのですか?

    「自分がプレーヤーの時、体の動かし方みたいなところには興味があったのでそれを「このように表現できるんだ」という驚きがあり、私にとってはとても面白かったですね。 例えば、肩の関節の角度が何度になっているとか、どのように動いているのかなど、動きを数字で表すことができる。これまでの感覚だけだったのに、それではない方法があるということを知りました。」

    ――卒論などもあったのですか?

    「野球の投球における粘着物質を用いた投球の即時効果」というテーマで書きました。粘着物質をつけて投げた時、粘着物質を取った後に同じような効果があるのかどうか研究をしていました。即時的な効果はなかったです。色々と方法を変えてもう少し詳しくやってみようとは思っています。」

    ――島さんの研究はどのようなことを野球界にもたらすことができますか?

    「投手はボールの回転数をデータとして出すことがあります。回転数を上げるトレーニングをプロだけではなく、アマチュアの人にもやってもらいたいな、と。そんなにお金もかからない方法もあるので、広くやってもらえるんじゃないかなと思います。」

    ――國學院大学に留まらず、大学院にまで進んだ経緯は?

    「今は慶応の大学院に通っています。取り組んでいた分野をもう少し知りたいなという欲が強くて、研究しようということで大学院に行くと決めました。 当時の國學院大学の学部のゼミの先生から、慶応のこの先生がいいんじゃないかと教えていただいて、自分も調べたんですけど、 自分のやりたいことをできるかなと思ってやりました。」

    ――受験勉強はしたのですか?

    「研究の計画書と面接などによって合否が決まりました。他の大学院は筆記試験があるところもあります。ただ、筆記試験がないからと言って勉強しなくていいというわけではないのです。今は修士1年です。2年計画ですね。」

    ――次のビジョンはありますか?

    「ずっと野球のことをやってきているので、 どこかの球団に入り、アナリストという職業に就くことができればいいなとは思います。選手の能力を向上させることで野球界に還元できるかなと思います。」

    ――大きな未来が待っていますね。

    「野球のデータとかも扱っているので、もっと日本全体がデータを活用していくような風潮を作りたいなと思います。」

     
     
    (終わり)

    島孝明(しま・たかあき)

    1998年6月26日生まれ。千葉・佐倉市出身。佐倉シニアから東海大市原望洋高に進学。3年夏には千葉県大会準々決勝で早川隆久(楽天)擁する木更津総合に0-1で敗戦するも、U-18日本代表に選出。2016年ドラフトでロッテから3巡目で指名。2019年オフに戦力外通告、育成契約打診を受けるも引退を決断。國學院大學へ進学。2022年WBSC「U-23ワールドカップ」の日本代表チームのクオリティコントロールスタッフを務めた。中学・高校の保健体育科の教員免許取得をし、2024年4月からは慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科への進学。右投右打。

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