【令和の断面】vol.219「40本塁打40盗塁は通過点」

令和の断面

 私事だが、8月3日から12日まで渡欧していた。
 ちょうどパリ五輪の期間中だったので、パリにも寄りたかったのだが、残念ながらそれは叶わなかった。訪問先はデンマークとスイス、再生可能エネルギー(洋上風力発電)の視察と社会インフラ(交通)を取材した。このリポートは、機会があればこのコラムでも紹介するが、現地に滞在中に「さすが!」と思うテレビCMを何度も見た。

 五輪中継のテレビを見ていると大谷翔平が契約するスポーツメーカー「ニューバランス」のCMが頻繁に流れてくるのだが、その冒頭に大谷が登場するのだ。
 各競技で活躍する各国の五輪選手が次々と登場する中、ドジャース同様トップバッターで大谷が出演する。野球がそれほど盛んでないヨーロッパでも、大谷は認知されている。改めて彼の存在の大きさを知る機会だった。

 さて、その大谷翔平だが、とんでもない記録が現実味を帯びてきた。
 シーズン前は、打者として「40/40」(フォーティー/フォーティー)が大きな目標だと思っていた。
 「40本塁打、40盗塁」これは過去に5人しか達成していない。ホームラン40本でも大変な成績、盗塁40個でもチームへの貢献が凄い。この両方を達成することは、俊足好打、もっともスリリングな野球選手としての証明である。
 過去の達成者は以下の通りだ。

 1988年 ホセ・カンセコ(アスレチックス)42本塁打 40盗塁
 1996年 バリー・ボンズ(ジャイアンツ)42本塁打 40盗塁
 1998年 アレックス・ロドリゲス(マリナーズ)42本塁打46盗塁
 2006年 アルフォンソ・ソリアーノ(ナショナルズ)46本塁打41盗塁
 2023年 ロナルド・アクーニャ(ブレーブス)41本塁打73盗塁

 18日(日本時間19日)、敵地でのカージナルス戦に大谷は「1番・DH」で先発出場。2試合連発となる先制の39号ソロを放ち勝利に貢献した。この時点で盗塁は37個。

 残り37試合。
 こうなると「40/40」は、もはや通過点。メジャー史上初の「45本塁打、45盗塁」どころか「50本塁打、50盗塁」も見えてきた。

 盗塁の成功率は相変わらず高い。
 以前にもこのコラムで書いたが、大谷は相手投手のクセを見抜いて走っている。
 ロバーツ監督も大谷の走塁には、絶大な信頼を寄せているので、盗塁に関しては常に「グリーンランプ」(信号が青、いつでも走っていい)だろう。

 問題は、ホームランをどこまで伸ばすことができるかだが、ナショナルリーグ西地区首位を行くドジャースは、最後まで緊張感のあるゲームを戦える。大谷が記録を意識することなくフォア・ザ・チームでプレーすることで、その可能性は高まるはずだ。

 ベッツとカーショーが復帰したドジャース。フリーマンの離脱は気になるところだが、それもまた大谷の集中力が上がる材料だろう。

 さあ、大谷翔平の偉業を見届けよう。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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