【令和の断面】vol.214「高校球児に珍アドバイス」

令和の断面

 国土交通委員会の委員として埼玉県春日部市にある首都圏外郭放水路を視察した帰りに母校、埼玉県立春日部高校に寄った。
 目的はただひとつ。
 夏の大会を前にした野球部の練習を見たかったのだ。

 聞けば春日部高校の野球部員は、現在50人を超える大所帯で、部員難で困っていることはないという。最近は部員が足りず、合同チームで出場する学校もある中で、単独チームで戦えるだけでもありがたいことだ。
 7月上旬。練習に明け暮れたい時期だが、試験前ということもあって練習時間は90分に制限されている。それでも選手たちは、溌溂と守備練習(ノック)をこなし、手際よくバッティング練習をやっていた。
 その様子は60歳を過ぎたOBを安心させるものだった。

 春日部高校の初戦は、試験明けの7月中旬だが、もう各地で夏の大会が始まっている。母校の選手諸君もそうだが、日本中の高校球児には3年間の成果を発揮して悔いのない試合をしてもらいたいと思う。

 そこで日本中の高校生に老婆心ながら、いくつかアドバイスを書いておこう。

 まず、「野球は2アウトから!」と劣勢のチームがナインを励ましているが、これでは勝てない。もちろん2アウトになっても諦めない気持ちは大切だが、「野球は2アウトから」ではなく「野球はノーアウトから」だ。ノーアウトから集中して相手に襲い掛かる。ベンチで声を出すなら「野球はノーアウトから」を全員で徹底することだ。

 もうひとつ。
 ボール球を振る選手に「ボールをしっかり見ていけ」と声が飛ぶ。
 これは「ボール球に手を出すな」という意味だが、ボールとストライクを見極めようとして、本当にボールをしっかり見てしまったら、差し込まれるか、打とうとした球は、もうすでにキャッチャーミットに収まっている。
 投球を打つかどうかは、ホームベースよりはるか手前で決めているので、ホームベース付近までボールを見たら、万事休すだ。
 だからボールをしっかり見るのではなくて、打てると思ったら躊躇(ちゅうちょ)なく振りにいくしかない。

 さらに言えば、ほとんどの打者が、カウント0-0や1-0、2-0のように初球か2球目、あるいはボールが先行しているカウントの方が打率が圧倒的に良い。
 2ストライクに追い込まれるとプロ野球の好打者でさえ、打率は1割台に落ちる。

 さあ、これで何が言いたいか分かってもらえるだろう。
 とにかく野球は、初球から思いっきり打っていくしかない。
 大谷翔平選手も、ほとんど初球からスイングを仕掛けていく。それもフルスイングで!
 じっくりボールを見ていたら、あっと言う間に追い込まれてしまう。

 高校球児のみなさん。
 「野球はノーアウトから」
 「野球は初球から」です。

 そして、もう一度言います。
 じっくりボールを見ていたら打てません。
 ボールが来る前に「ここだ!」と思ったら、覚悟を決めて振りましょう。

 大丈夫!
 練習してきた身体が、バットとボールを勝手に出会わせてくれます。

 さあ、みんな頑張っていこう!!!

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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