【令和の断面】vol.210「全国中学生大会が縮小」

令和の断面

 日本のスポーツ環境がどんどんシュリンク(収縮)している。
 そう感じる改革が、中学生の大会で行われることになった。
 「全中」の名前で親しまれている「全国中学校体育大会」が2027年度以降、開催競技を現行の「20」から「11」に減らすことになった。
 取りやめが決まった「9」競技は、以下の通りだ。

 水泳、ハンドボール、体操、新体操、ソフトボール男子、相撲、スケート、アイスホッケー、スキー(30年度から)

 大会規模が半減する理由は、少子化からくる部活動の部員不足が一番の理由だが、加えて、大会運営を担う教員の負担を軽減することもその狙いだ。

 廃止になる競技のうち、水泳を除く8競技は、部活動のある学校が全国で1000校に満たないことが分かった。

 今回の改正で「11」の競技が残ったが、大会の会期も3日間に縮小され、参加人数や開催経費も30%削減されることになった。

 これは、誰が責められる話でもない。
 時代の中での変化だ。

 しかし、大事なことは、そして変わらないことは、中学時代の勉学や部活動が、その後の彼らの基礎になるものであり、何物にも代えがたい時間だということだ。

 中学時代の体験が、成長の源になる。

 競技を問わず、多くのトップアスリートが、そして五輪選手が全中を通じてたくさんの刺激をもらい、その体験を通じてさらに大きく羽ばたいていく。
 全中は、そうした場になってきたのだ。

 ところが今回、その機会を失う競技が発生する。

 水泳などは、日本水泳連盟が開催するジュニアの大会に中学生の大会を取り込むことを検討しているようだが、ハンドボールやスケートなど各競技団体は今後の対応に追われている。

 心配されるのは、全国大会が無くなることで、その競技に取り組む中学生がさらに減少することだ。

 中学生時代に大切なことは、勝ったり負けたりすることを経験することももちろんだが、違う地域の生徒と交流することで仲間意識や良い意味でのライバル心を抱くことであり、地元を出て旅をする体験そのものに意義がある。
 そうした体験のすべてが、大人への準備なのだ。

 スポーツを通じていろいろなところに行ける。
 スポーツをすることでいろいろな人に会える。
 中学時代における勝敗は、その次に来るものだ。

 全中が無くなる各競技団体には、そうした教育的意義を考慮して代替となる大会参加を是非検討してもらいたいと思う。

青島 健太 Aoshima Kenta
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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