今永昇太投手(30歳)の快進撃が止まらない。
今シーズンからシカゴ・カブスにポスティングで移籍した元DeNAの今永だが、当初は地元のファンも「Imanaga Who?(誰?)」って感じだっただろう。
日本球界では着実にその地位を固め、日本代表でも欠かせない左腕となっていた今永だが、インパクトという点では大谷やダルビッシュ、山本由伸などに比べると印象が薄かったと思う。
何よりメジャーにあっては小柄だ。
身長178センチ。
日本のプロ野球でも普通のサイズだ。
こんな小さな投手で大丈夫か?
アメリカのメディアでさえそうした評価の方が多かったと思う。
なにしろメジャーのほとんどの投手は、まず190センチ台だ。
しかも今永の球速は150キロ前後。
誰もが、ここまでの大活躍を予想できなかったはずだ。
5月20日現在、デビューから負けなしの5勝0敗。防御率0.84は、両リーグトップはもちろん、デビューから9戦での成績としては、これまでのメジャー史上でも1位という成績だ。
とにかく打たれない。
しかも四球もほとんど与えない。
完璧な投球を続けているのだ。
なぜ今永は打たれないのか?
メジャーリーグの公式サイトが早速分析をしている。
今永の最大の特徴は、投球の減速率が低いというのだ。
つまりボールが失速しないので、打者にとってはホップするように映る。
それを知って、すべての合点がいった。
小柄な体格、しかも球速もずば抜けて速い訳ではない。
打者にとっては、それほど脅威に感じる投手ではない。
メジャーの強打者からすれば「軽く打てるだろう」と思わせる投手なのだ。
ところが、そのボールをいざ打とうとすると、直前で伸びてくる。
しかも今永は臆することなくインコースを突いてくるので、この伸びるボールに各打者はついつい詰まらされてしまうのだ。
そして、特に右打者は、詰まるのを嫌ってポイントを前にして打とうとすると、真ん中から外に投げられるチェンジアップやスプリットに手を出してしまい、簡単に打ち取られてしまうのだ。
そしてこの好成績を裏付けるもう一つの要素は、彼の冷静沈着な思考だ。
それは日本時代から「教授」や「哲学者」と呼ばれるほど際立っていたが、メジャーに渡ってより一層研ぎ澄まされているように思う。
例えば、防御率がトップなのを受けて、こんなことを言っている。
「もっと下げてやろうとか思わない方がパフォーマンスは良い」
つまり、それを意識することなく投げる方が、球が走り変化球が切れることを彼はよく知っているのだ。結果、防御率が下がる(良い成績になる)。
心と身体のスペシャリスト。
そこが「教授」と言われる所以である。
だからつねに良い結果が出やすい心理状態を作ってそのモードで投げる。
もちろんすべてが思い通りになる訳ではないが、どうすれば自分の力を引き出すことができるのか?そのことを誰よりも知っているのだ。
早くも新人王やサイ・ヤング賞候補などと言われているが、彼がそんな評判に浮かれることはもちろんない。なぜならば、その方がそうした賞に近づく道だとよく知っているからだ。
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。