HERO'S COME BACK~あのヒーローは今~

岡本直也#3
「野球を続けて生まれた絆」

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    #1 なぜ焼肉店に挑戦したのか#2 戦力外通告からの決断

    どんな仕事でもプロ野球生活で出会った人との縁を大事に 元横浜、ヤクルトの岡本直也さんが振り返る現役時代(インタビュー全3回)#3
    東京・六本木で焼肉店「BEEFMAN」を経営する岡本直也さんは横浜ベイスターズに2001年ドラフト4位で入団し、海外含めて約10年間、プロ野球人生を送りました。今では都内でお店を10年も構える経営者となり、後輩たちにもアドバイスを送っています。インタビュー第3回(最終回)は引退して10年だから思えることをテーマにお伝えします。
    (取材日・2022年10月13日)

    ――紆余曲折を経て、2011年の現役最後はヤクルトでのプレーになった。

    テスト入団をさせてもらってから、結局、3か月もいなかったぐらいですね。7月の末にアメリカから帰ってきて、テストを受けて、規約ギリギリのところで入団で、10月にクビでした。3試合の登板でした。

    ――そこでNPB球団で2度目の戦力外通告

    マネージャーから電話がかかってきて、球団事務所に行きました。もう27歳だったし、当落線上ではあったかもしれないなとは思っていました。もう、でもこれまでも何回もクビになっているので、クビに慣れてしまっていた。通告は今度は2分くらいでした。そのときは申し訳ない、とかねぎらいの言葉をいただきました。

    ――引退の区切りをつけることができたのは?

    もういいかな、と。もういけるところがない。もう自分で実力はわかるじゃないですか。独立リーグとか、メキシコにも行こうと思えば行けましたけど、もう先がないじゃないですか。もう1回、そこから何を目指してやるんだと考えた時には、もう踏ん切りがつきました。

    ――選手たちもよくお店に来る。引退を考えている選手にセカンドキャリアのことで相談されることも多いのではないですか?

    コロナウイルス感染の拡大で来店は減りましたが、結構、将来に不安を持っている人も多いので、相談を受けることはあります。独立リーグから誘われたのでいきます、こういう仕事に誘われたのでいきます……とか相談事は人それぞれですが、未練がある選手が多い印象です。

    ――そういうときは背中を押してあげるのですか?

    自分との仲の良さにもよりますかね。距離が近い人間には単刀直入に言います。僕もいろいろと経験しているので、実力はわかるじゃないですか。もう辞めてもいいんじゃないかと言ってあげるときもあります。僕もヤクルトを辞めた時、150キロ出せていてテスト受ければ受かるみたいなことも言われましたが、辞める判断をしました。

    ――引退を選んだ理由は

    最後の1軍の試合になった横浜スタジアムでのベイスターズ戦で大事な場面でリリーフとしてマウンドに上がりました。抑えたら来季に繋がるという場面で下園選手にピッチャー返しをされて、左足に当たったんです。負傷降板となりました。投げようと思えばいけたのですが、もう足が腫れ上がっていて、最後は自力で歩けなくなってしまいました。

    ――負傷したことがきっかけ?

    あの大事な1軍の試合で、僕みたいな投手はわずかなチャンスをもらったところで、それをものにしないといけないのに、ピッチャー返しをくらうなんてこんな運のない奴はいるのか、と。運って、プロ野球をやっていく上で必要なんですね。こんなんじゃもう、この先にはいけないなと思いました。いくら自分の中で力や自信があると思っていても、それは自分の中だけの話になる。

    ――その「運」で助けられた部分も多かったのでは?

    細かいことを挙げていけばあるのかもしれないすけど、そんなに何か思いつかないですね。たぶんにそういう良かったことは気にしなかったのかもしれません。

    ――運という言葉は置き換えると「縁」かもしれないですね。お店をオープンするにあたり、人に支えられた部分も大きかったのではないですか?ヤクルトは優勝の祝勝会の会場にもなった年もありましたね。

    そうですね。初めから今もそうですけど、ベイスターズには8年いて、スワローズには3ヶ月しかいなかったですけど、皆さん、仲良くしていただいています。店を始めてからも、いつも気にかけてくださっています。

    ――スワローズは短かったけど、海外での経験があってNPBに戻ってきているから“兄気分”的な感じで若い子が親しみやすかったのではないですか?

    日本の野球にがんじがらめになって練習している人間に対して、僕は一応メキシコやアメリカとか海外の野球をちょっと経験していたので、その違いは伝えましたね。細かいこと気にしている選手には、そんなこと関係ないよ、とか自分が思ったようにやればいいんだよ、とか。クビになったら後悔するのは自分だよ、みたいな話とかは結構、若い子たちにしたりしました。

    ――野球を続けてよかったなと思えることはどんなことがありますか?

    ベタかもしれないですけど、人との出会いですね。これは野球のうまい人のセリフかもしれないですけど、野球の上手い、下手は僕にとってそこまで関係がなくて、今でも野球を通じて知り合った人と、連絡取りますし、そういう人との付き合いがここのお店はじめた時から、支えていただいた。やっぱり、人との出会いじゃないですか。

    ――戦力外になって、さあ次何しよう。どうしようって迷っている選手にアドバイスしてあげるとしたらどんなこと言ってあげますか?

    もうやり切ったのであれば、チャンスはチャンス。ある意味、自分で行く道を選べる。やりたいことをやるというか、やりたいことを見つける。なかなか難しいし、多分好きなことを仕事にするって、なかなか難しい。そこへの努力、そこに対する我慢、忍耐力は必要になってくるとは思います。

    ――海外を見てきた経験も大きかったのではと感じますが、いかがですか?

    文化の違いはありますよね。メジャーで引退や野球を辞める方へ「おめでとう」と門出を祝して、そう表現しますよね。第二の人生が楽しみだね、みたいなそういう声のかけ方をするじゃないですか。なんか、日本はすみません、とそういう挨拶になる。次どうするの?とか、いうような感じになりますよね。そんなこと言われても自分だってわからないのに…。その違いは感じます。

    ――プロ野球選手生活を改めて振り返ってください

    華々しく終わった選手は違うと思いますけど、僕みたいにずっと二軍で下積みみたいに終わったような選手は野球をしていることが苦痛なんですよ。二軍でクビにしてほしいと思っても、クビにもしてくれないし、なんかもう(クビにしてほしいという)そういう感じなんすけど、かといって、クビにならずに8年も(ベイスターズに)いた。おそらく3年ぐらいしたら使う気がないとわかる。その後、5年ですから、特別使うということはなかったと思いますよ。微妙なラインの実力にいたのかもしれません。外から取ってきた選手や、新人を取ってきて失敗するくらいならば、こっち(自分)の方がいいかなぐらいの考えからだと思います。ちょっと野球が人よりうまかっただけで、プロになれて、みんなからよかったねって言われるんですけど、別に何も野球だけが全てではないんですよね。僕にとってはプロ野球生活は苦痛でした。結構苦痛。なんか、本当に毎日が苦痛だったというイメージですね。

    ――ありがとうございます。今後どのように将来設計、お店を展開していきたいですか

    これは難しいんですけど、僕自身は川上に立たないと思ってるんです。店舗に関しては広げつつありますが、コロナでどんな業態がいいのかなどもわかってきました。例えば、今、麻布十番に無人のお店とかも出して、売り上げが上がったりしています。人の流れがどっちになっても動じないものを広げていきたいですね。焼肉以外でもそうですね、いろいろ展開したいです。まだまだですので、頑張っていきます。

    (終わり)

    プロフィール

    岡本 直也(おかもと なおや)
    1983年7月28日、岡山県倉敷市生まれ。岡山理大付で甲子園出場。2001年のドラフト会議、4巡目で横浜ベイスターズから指名を受け入団。その後、メキシコ、米マイナーリーグを経て、2011年にヤクルト入団。同年に現役引退し、2012年に「焼肉 BEEFMAN」を開店した。


    店舗情報

    店名 焼肉 BEEFMAN
    住所 東京都港区六本木7-16-5戸田ビル1F
    アクセス 都営大江戸線 六本木駅(7番出口)徒歩2分
    地下鉄日比谷線 六本木駅(4b出口)徒歩2分
    電話番号 03-5785-2082
    営業時間 月~日、祝日、祝前日17時~23時30分
    (料理L.O. 22時50分 飲み物L.O. 23時)
    定休日 不定休
    ホームページ https://beefman.net
    座席数 32席
    駐車場 近隣にコインパーキングあり

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