令和の断面

【令和の断面】vol.160「加藤未唯選手(失格)の理不尽を繰り返すな」

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    「加藤未唯選手(失格)の理不尽を繰り返すな」

     これだけ技術が進歩している時代に、ITF(国際テニス連盟)はいったい何をやっているのか?全仏オープンの大会運営者は、いったい何を考えているのか?
     そう言わざるを得ない大失態である。

     もう、何を言いたいか、テニスファンはもちろん、スポーツファンの多くがそう思っていることだろう。

     全仏オープンの女子ダブルス3回戦。
     日本の加藤未唯選手(28歳、ザイマックス)の返球したボールが、ボールガールの頭を直撃し、危険な行為とみなされて失格となった例の一件である。
     この後、加藤選手が失意の中にあっても混合ダブルスで優勝したことで、すべてがチャラになるような雰囲気が生まれているが、忘れてはいけないのが、彼女が失格に至るまでのプロセスだ。
     最初審判は、「警告」をしてそれで終わるところだった。
     ところが対戦相手のペアが執拗に抗議し、最終的に運営責任者が「危険な行為」と判断し加藤選手の失格が決まった。しかも、そこまでの賞金やポイントも没収されると言うのだ。

     この試合をほぼリアルタイムで見ていた私は、すぐさま「なんてバカな裁定なのだ」と思うと同時に、判断を下す運営責任者が「ビデオ録画はチェックしない」と言っていることに、下手なシャレではないが「最低な裁定だな」と思った。
     しかも後から報道されていることによると、執拗にクレームをつけていた相手ペアは、どうやらボールが当たったシーンを見ていなかったというのだ。
     これもまた、ガッカリするやら、腹が立つやら……。

     この件について言いたいことはたくさんあるが、解決策だけをシンプルに書いておこう。
     簡単なことだ。
     こうした重要な裁定は、必ずビデオをチェックして下すべき!
     これだけのことですべて解決するはずだ。

     この時代においてゲームの録画システムは、もう技術とは言えないほど当たり前にできることだ。それさえやっていれば、決して故意ではない加藤選手の返球もすぐに判断できたはずだ。加えて相手ペアもテニスファンを敵に回すようなバカなことを言わなくて済んだことだろう。
     これから先も、このようなことは十分に起こり得る。なぜなら選手は試合中に何度もボールパーソンに返球するからだ。時には、強めに帰したボールが今回のようにボールパーソンに当たってしまうことが今後も必ずある。そのたびに選手が失格の危機に瀕していたら、これはもう大会が成り立たない。

     こうしたアクシデントが起こったら、必ず録画映像をチェックする。
     この一件をめぐっては、その解決策がまだ示されていないので、当コラムでしっかり記しておきたい。

     それと選手が注意すべきは、返球は必ずワンバウンドやツーバウンドくらいの緩いボールを返すことだ。ゲーム中のフラストレーションのままに強いボールを返すことは、もうそれが敗戦への一歩だ。ゲームの最中に怒りのままにラケットを折る選手も見かけるが、それをやって勝った選手を知らない(もしかしたらいるかもしれないが……)。
     ラケットを折る様子は、観ていて見苦しいというか、不快そのものだ。
     ボールパーソンへの返球も、相手への配慮を考えれば、つねに捕りやすいボールを返すことが、プロとして当然のマナーと言えるだろう。

     返球による失格騒動が、これで最後になることを強く望みたい。

    青島 健太 Aoshima Kenta
    昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
    慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
    同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
    5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
    オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
    現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
    2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
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