「日大アメフト、交流戦の復活を喜ぶ」
うれしいニュースを見つけた。
関西学院大学アメリカンフットボール部と日本大学アメリカンフットボール部の春季交流戦が5年ぶりに神戸(4月22日、王子スタジアム)で復活するというのだ。
過ぎたことを蒸し返す必要もないかもしれないが、あの頃の日大再建に関わった者の一人として、伝統の一戦(関学大VS日大)を喜びたい。
問題の発端は、2018年の5月の同交流戦だった。
日大の選手(DL)が、パスを投げた関学大の司令塔(QB)に、プレーが終わっていたにもかかわらず背後からタックルを仕掛けたのだ。
関学大の選手は、腰や足に3週間のケガを負い、選手の父親が大阪府警に被害届を出したことで、このプレーが「悪質タックル」として、世間の耳目を集めることになった。
タックルした選手は記者会見を開き、自分のプレーを謝罪した。
そこで明らかになったのは、指導者から相手がケガをするかもしれない危険なプレーを求められていたということだった。
それが本当に指導者の指示だったのか、選手の思い込みだったのかは、メディアを通じてもさまざま議論がなされ社会問題に発展していった。
結局、当時の監督、およびコーチは退任し、部の再建とそれを託す監督の選任が外部識者に委ねられ、その選考委員の一人としてこの問題に関わった。
監督選考会議でどのような議論が行われ、どのようなプロセスを経て監督が決まったかについては、守秘義務もあるので詳細は省くが、我々が求めた監督像は今の時代に即した民主的で高いレベルの技術指導ができる人で、同時に透明性のある部運営を進めてくれる人だった。
新しい監督、コーチを迎えた日大アメリカンフットボール部は、謹慎期間を経て、リーグ戦に戻った後は、順調に再建の道を歩き、20年12月の第75回甲子園ボウルで関学大と対戦した。
この時は、42対24で関学大が勝利をおさめている。
そして今回、「危険タックル問題」のきっかけになった春の交流戦が復活し、本当の意味での和解、健全な大学スポーツの再興が始まることになった。
平和を愛し、他者の存在の有難みを知るためのスポーツの現場で、ケガをさせても構わないというタックルが行われたことは、遺憾であるばかりか、許しがたい蛮行だ。スポーツを否定する愚行の極みである。
しかし、関係者の謝罪と反省をあって、伝統の一戦が再び行われることになった。
これ以上うれしいことはない。
なぜなら、こうした伝統の試合を経験して一番成長するのは、選手たちだからだ。
スポーツ界のOBとして、また監督選考委員会の一員として、その機会が戻ってきたことを、喜ばずにはいられない。
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。