令和の断面

【令和の断面】vol.143「プロ野球 始まったレギュラー争い」

SHARE 
  • 連載一覧へ


    「プロ野球 始まったレギュラー争い」

     プロ野球がキャンプイン。
     早いチームは、早速紅白戦など実戦形式の練習を行い、各選手が溌溂としたプレーを見せている。今年は、3月にWBCを控えているので、例年以上に早い仕上がりとなるだろう。

     我々が現役の頃(80年代)は、2月の中旬まではのんびりとした練習を行っていた。紅白戦が始まるのは2月の下旬、オープン戦は3月になってからスタートした。
     実績のあるベテラン陣は、3月のオープン戦に向かって調整し、しかも試合に登場するのはオープン戦が後半に入ってきてからだ。それまでは控え組のアピールタイムで、若い選手が試される場だった。

     ところが最近は、キャンプがスタートするとすぐに紅白戦などが行われ、2月の中旬には練習試合やオープン戦が催される。今年は、WBC組の調整のために、さらに早く実戦形式が取り入れられるだろう。

     「調整のキャンプ」から「試合のキャンプ」への流れを一気に加速させたのは、2004年に中日の監督に就任した落合博満氏だ。多くの野球ファンは覚えているだろうが、落合監督は「キャンプ初日からの紅白戦」を選手に通達したのだ。
     これが何を意味しているのかは、明白だった。
     2月1日に紅白戦を戦うためには、それまでにコンディションを整えておかなければならない。つまりオフの間も練習することを求めたのだ。
     これで野球界のオフの過ごし方が一変する。
     ほとんどの選手が、休まずにトレーニングを継続するようになったのだ。

     もうひとりのインフルエンサーは、イチロー氏だ。
     イチローさんも、現役時代、オフの間も休むことなくトレーニングを続けていた。そうした彼の日常がメディアで紹介されると、多くの選手が影響を受けて、そうしたオフの過ごし方がもはや野球界の常識になった。

     また、落合氏が初日から紅白戦を断行した狙いには、もうひとつ大事な意味がある。
     それは、キャンプに集まったその日からチーム内の競争が始まっているというメッセージだ。

     沖縄や九州でのキャンプ。
     温かい日差しの中で行われる練習は、和やかな雰囲気に包まれているが、そうした穏やかな毎日の中で「1軍→2軍」「2軍→1軍」という選手の移動が密かに行われている。若手選手にとっては、毎日が生き残りをかけたサバイバルレースだ。

     WBCで主力選手がいなくなるチームも若手にとってはチャンスだ。
     その分、オープン戦でアピールできる機会が多くなる。

     この春は、WBCの結果で世の中は一喜一憂するだろうが、そうした中で若手や新人のレギュラー争いをフォローするのも、通な野球ファンの姿勢だ。

     ちなみに30数年前、青島がレギュラーポジションをがっちりとつかんだのも、2年目のキャンプだった。そのシーズンは不動のレギュラーとしてポジションを譲ることはなかった。

     そこは監督のすぐ隣のポジション。
     「ベンチ」だ(笑)。

     頑張れ若手!!!

    青島 健太 Aoshima Kenta
    昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
    慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
    同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
    5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
    オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
    現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
    2022年7月の参議院議員選挙で初当選。
    バックナンバーはこちら >>

    関連記事