「吉田正尚への期待」
このところのメジャーリーグを見ていて気になることがある。エンゼルスへの残留が決まった大谷翔平の活躍は、言うまでもなく大きな喜びであり、楽しみでもあるのだが、彼に続く日本人打者の存在が希薄なことだ。
投手はなんとか生き残っている。パドレスのダルビッシュは素晴らしい活躍を続けているが、菊池雄星や前田健太、そのほか数名の投手がギリギリの戦いを強いられている。
一方の打者は、大谷以外ほとんど姿を消してしまった。
秋山翔吾や筒香嘉智が束の間存在感を見せたが、大活躍とはいかなかった。かつては、野手陣も各チームで輝いていた。イチローに始まり、松井秀喜、城島健司、
福留孝介、岩村明憲、井口資仁、青木宣親等々。
しかし、近年の日本人打者は、メジャーで苦しんでいる。
最大の原因は、フライボール革命の浸透だろう。各打者がアッパースイングでフライを打つようになった。確率的にフライの方がヒットになりやすいというデータ分析からその動きは始まった。
これに対抗するために、今度は投手たちがツーシームやカットボールのような動くボールを多投するとともに、高めのフォーシームで勝負する機会も増えた。この結果、低めをさばくにせよ、高めを打つにせよ、今まで以上にパワー勝負の側面が増したのだ。そこでバットコントロールが巧みな日本の好打者たちは、パワー不足で苦戦するようになってきた!というのが私の見立てだ。
さて、そんな日本人打者苦戦の状況で楽しみなバッターが渡米しようとしている。
オリックスの吉田正尚だ。すでに球団とポスティングでの挑戦を話し合っているという。早速メジャー各球団も反応し、ヤンキースが獲得を狙っているとの報道がある。
吉田に対する評価は「日本人最高の打者」というものだ。
同じレベルには、ヤクルトの村上宗隆やソフトバンクの柳田悠岐がいるが、バッティングの巧さという点では、吉田を推す人が多いだろう。
その吉田がメジャーで活躍するかどうかは、これからの日本人選手の動向を左右するものになるだろう。
吉田は、日本屈指の好打者でありながら、ウエイトトレーニングを趣味にするほど身体を鍛え上げている。線の細い中距離ヒッターではなく、筋肉の鎧を着たテクニシャンだ。
身長173センチと小柄な吉田が、このスタイルで成功すれば、日本にいる選手たち、そしてこれからの選手たちに大きな方針を示すことになるだろう。
来年のヤンキース、右翼にアーロン・ジャッジ、左翼に吉田正尚が守っていることを楽しみにしたいと思う。
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。