「森保一監督の準備は整った」
「自国の監督なんか絶対にやってはいけない」と言ったのは、サッカーW杯で2度日本代表の監督を務めた岡田武氏だ。
この言葉に多くの説明はいらないだろう。
母国を率いて戦う代表監督がどんな目に合うかは、読者の想像通りだ。いや、SNSが普及した今では、想像を超えるバッシングの標的になる。これが本人だけならまだ我慢ができても、その被害が家族や親族に及ぶこともある。代表監督は勝っても負けても、批判の俎上に立たされる。その爆風に常人は耐えられない。岡田氏の警鐘にも似た指摘は、結果的にW杯に臨む代表監督がいかに大変な任務かを物語っている。
いよいよ開幕するW杯カタール大会に向けて、森保一日本代表監督が現地に飛び立った。
彼の胸中には、今どんな思いがあるのだろうか。
「楽しみな気持ちもありつつ、W杯に向けて積み重ねてきたことを、最善の準備をしてやっていきたい。割と落ち着いている」
そう言い残すと、森保監督は報道陣に軽く手を挙げて穏やかな顔つきで飛行機に乗り込んでいった。日本の戦いは23日のドイツ戦(@ドーハ)から始まるが、初戦の前からもうすでに森保監督には多くの批判が集まっていることだろう。
大迫勇也は絶対に必要な選手だ。
原口元気をなぜ外したのか。
古橋亨梧の活躍を知っているのか。
等々。
代表から漏れた選手のファンは、一斉に森保批判に走っていることだろう。
あるいは若手中心のチーム編成に、「これじゃダメだ」と異を唱えている人もいるだろう。
そう、とにかく何をやっても代表監督は針の筵を歩かされるのだ。
それが岡田氏の嘆きであり、指摘でもあるのだ。
でもそれを覚悟しなければ、代表監督は務まらない。
森保監督も百も承知だ。
「なんでこんな勝ち方しかできないんだ、と言われることもあるし、負けたら批判だらけ。プロの世界では当たり前」と割り切っている。
その上で
「賛否両論含めて見てくれている目の数が多いほど、サッカー文化が広がってくれているんだなというふうには捉えています」
さて、今回のW杯には、どれだけの「目」が集まるのか。
また熱狂の日々が始まる。
勝っても負けても誹謗中傷の渦。
激励や賛辞が、批判を上回る戦いを期待したい。
選手のコンディションは、これから仕上がってくるだろうが、その前に森保監督のSNSへの準備は整っているようだ。
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。