「1億円のニンジン」
私がヤクルトの現役時代(80年代後半)、神宮球場のホームラン賞は確かエポック社の野球盤だったと思う。他にもいくつか賞品があった気がするが球場にアナウンスされる「○○選手には、エポック社の野球盤が贈られます」のアナウンスがなぜか耳に残っている。
プロ野球の試合には、いろいろな賞が用意されていて、勝ち投手や猛打賞(3安打)、盗塁やダブルプレーなどに賞品が贈られる。
また球場に掲げられている看板にホームランが直撃すると、その企業から賞金や豪華な賞品が届いたりする。
そうしたプレゼントは、プロ野球選手にとって大いに励みになるのだが、このプレゼントは破格のスケールといえるだろう。
優勝へ向かって快進撃を続ける東京ヤクルト・スワローズ。
その主砲は、言うまでもなく4番を打つ村上宗隆選手(22歳)だが、彼のホームランに1億円の家(上限税込み1億円)が用意されることになった。
スポンサーは、オープンハウス。
これを書いている9月6日現在、50本塁打の村上選手だが、56本以降のホームランを神宮球場の外野スタンドに叩き込むと、ホームラン賞として都内の1億円の家がプレゼントされるというのだ。
まさに「1億円のニンジン」。
6日現在、この日のナイトゲームを含めると残りは21試合。あと6本のホームランは今の調子なら十分に可能だろうが、問題は56本以降を神宮球場で打てるかどうかだ。 今週は4試合。9日、10日と神宮で試合があるが、ここで固め打ちの可能性もあるが、56本目を打つとしたら、やはり来週以降だろう。
そうなると残る神宮での試合は、13日、22日、23日、24日、25日、27日、28日の7試合。
問題は神宮球場に乗り込んだ時に、村上が何本のホームランを打っているかということだが、このホームラン賞獲得は、かなり難しいのではないかと思っている。
今シーズンは、日本記録の5打席連続ホームランも打っている村上だが、これからの神宮での打席では、必ず1億円の家が付いて回る。
つまりこれまで以上にホームランを意識して打席に立たされることになる。
これが老婆心ながら彼の変化を心配する最大の要素だ。
これまで通り、来た球を素直に打ち返すバッティングができるかどうか?
ホームランに対する意識が強くなりすぎると、力みや強引さが顔を出して、好調なバッティングを崩す可能性がある。
「1億円のホームラン賞」
村上自身も「期待の表れ」と、この賞の設置を喜んでいるが、思わぬ心理的変化がバッティングを崩すこともよくあることだ。
私の心配が杞憂に終わることを願うばかりだが、ホームランを打つことの難しさを誰よりも知っているのが村上本人だ。
さあ、村上にどんな結果が待っているか?
ヤクルトの優勝と共に、見届けたいと思う。
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテネで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
2022年7月の参議院議員選挙で初当選。