令和の断面

【令和の断面】vol.122「議員会館から見える野球部」

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    「議員会館から見える野球部」

     2か月振りの原稿。この間、おかげさまで参議院選挙(全国比例区)に当選することができました。まったく違う生活が始まりましたが、これまで通り「令和の断面」を書かせてもらうことになりました。引き続きよろしくお願い致します。

     さて、今は毎日、永田町の議員会館に通っているが、8月中は朝から野球の練習を見るのが楽しみだった。議員会館のすぐ隣に都立の有名な進学校があって、休憩室に行くとその練習風景がよく見えるのだ。
     朝9時に議員会館に行くと、もう練習は始まっている。何時からやっているのかはわからないが、猛暑の日中を避けて練習をしているのだろう。おまけにこの時間に練習すれば、午後はたっぷり勉強にも取り組めるはずだ。東大合格者数で全国トップクラスを誇っている伝統校だけに、むしろ勉強時間を確保するための早朝練習なのかもしれない。

     ただ、残念ながらグラウンドに恵まれているとはいえない。
     細い長方形の校庭でセカンドのすぐ後ろが崖になっていて、ライトの守備位置がない。守備練習(ノック)の時は、レフトとセンターに外野手が集結する。
     そういえばバッティングを見たことがない。ボールを打つのはネットに向かってのティーバッティングばかり。もしかするとボールが外に飛び出すと危険だから(3塁側には高さ20メートルほどのネットが設置されているが)、ピッチャーが投げてのバッティングはできないのかもしれない。
     しかし、外野に向かってのロングティーなど、置かれた環境でそれぞれが工夫して練習している。

     日本を代表するスプリンター桐生祥秀選手(100m9秒98)の高校は、直線が80メートルしか取れなかった。そんな環境でも10秒を切るランナーが生まれている。

     以前取材した新宿区の私立高校の野球部は、50メートル四方ぐらいのグラウンドで練習していた。その広さは全員でキャッチボールができる程度。外野のノックなどまったくできない。バッティングと外野の守備練習ができるのは、週末に借りる野球場での練習だけ。それでも50人近い部員が工夫しながら練習していた。
     そのチームの監督が言った。
    「うちの選手は広いグラウンドで練習できる機会が圧倒的に少ない。でもその分みんな野球がやりたくて仕方がない。モチベーションはすごく高いんです」

     きっと桐生選手も同じような思いだったかもしれない。
     都立高校の面々も、環境に負けずに頑張っている。

     恵まれた環境は、ありがたい。
     しかし、不自由な環境も、知恵と工夫によって乗り越えることができる。
     そうやって私たちは、さまざまな困難を克服してきたのだ。

     この夏、議員会館から見える野球部に人知れず元気をもらった。

    青島 健太 Aoshima Kenta
    昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
    慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
    同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
    5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
    オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
    現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。
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