「ヤクルト、ロッテ、楽天、3球団の監督に共通することは?」
この原稿を書いている火曜日(10月26日)の朝の時点で、まだプロ野球セ・パ両リーグの優勝チームは決まっていない。ヤクルトのマジックは「2」、ロッテのマジックは「3」だが、阪神やオリックスの逆転優勝の可能性もある。いずれにしても今週中に決着がつくことだろう。
スワローズのOBだけに(なんとOB会副会長も務めています)、ヤクルトの動向は気になるところだが、この稿で触れておきたいのは、プロ野球で始まっている(あるいは単なる偶然かもしれないが)、監督のキャリア(資質)についての傾向だ。
セ・パ両リーグとも、CS(クライマックスシリーズ)への進出チームはすでに決まっている。
【セ】ヤクルト、阪神、巨人
【パ】ロッテ、オリックス、楽天
この6チームの監督を見ると、3チームの監督がメジャーリーグ経験者なのだ。
■ヤクルト 高津臣吾監督(52歳)ホワイトソックス、メッツ
■ロッテ 井口資仁監督(46歳)ホワイトソックス、フィリーズ、パドレス
■楽天 石井一久監督(48歳)ドジャーズ、メッツ
読者は、もうお気づきだと思うが、12球団に3人いるメジャー経験者(監督)が、3人ともCS進出を果たしているのだ。もし、ヤクルトとロッテが優勝すると、両監督はホワイトソックス時代にワールドチャンピオンに輝いたチームメイトということになる(日本シリーズで対戦する可能性もある)。
これは単なる偶然か?あるいは3人のメジャーリーグを経験した監督(マネジメント)に、何か優れた要素を見出すことができるのか。
まず間違いなく3氏にメリットがあるのは、外国人選手との関係作りだろう。プライドの高いメジャーリーガーが来ても対等に話すことができるだろうし、彼らの練習方法やプレースタイルも理解しているはずだ。もしメジャー経験の浅い選手ならば、監督のキャリアや言動に敬意を払うことだろう。ロッテやヤクルトの外国人選手が活躍している背景には、そうしたことも理由にあるのではないかと思う。
私が知る限りでは、3人の監督がメジャーリーグ流の組織改革や大胆な戦術を展開しているという訳ではない。昨今のメジャーリーグでは、左右の打者によって極端な守備のシフトを敷いたり、中継ぎ投手を先発に起用し最初から継投策でゲームを組み立てる「オープナー」といった戦術が流行っていたりする。3氏が、こうした作戦を多用しているわけではない。ただ、選手のコンディションへの配慮は、メジャー流(あまり練習しすぎない)が功を奏している気がする。ロッテの佐々木朗希投手の起用法などは、ケガや故障を回避するために無理をさせない登板回数と球数が守られている。
またフレンドリーな選手との関係性についても、メジャー流といえるだろう。いずれも明るいチームカラーが醸成されている。3チームとも得点力が高いのは、攻撃的(メジャー流)な野球をやっている証しだろう。
もちろん監督への人望は、主にパーソナリティーによるところが大きいだろうが、メジャーリーグを経験している監督ならではの要素があるような気がしてならない。そもそもメジャーに渡った人たちなので「チャレンジ精神」が旺盛な人であることは確かだろう。
それがチームの勝敗にどのように影響しているかを、ここで詳細に説明することはできないが、3人の存在が新しい時代(新しい監督像)の扉を開けているような気がしてならない。
ミスが出て広島に一挙7点を奪われ逆転負けを喫したゲーム(21日、神宮)の後にヤクルト・高津監督が言った。
「泣いても笑っても先は見えている。全力で戦うだけ。負けることを、ミスを恐れてグラウンドに立つなんて絶対にしてほしくない。精一杯全力でプレーしてくれたらそれでいい」
こうした発言に選手を責めないメジャー流の開放感を感じるのだが、これが選手の力を引き出す理由なのかどうかは、もう少し彼らの野球を観てからにしよう。
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。