「楽天田中、オリックス平野に期待すること」
12球団がキャンプインしたプロ野球。
早速、各チームで紅白戦も始まり、実践モードに突入した。
コロナ禍で観客もいないキャンプだが、開幕を目指す選手たちにとっては、1軍定着、レギュラー確保を賭けたサバイバルレースが続いていく。観客の有無にかかわらず、これからは気の抜けない日々の連続だ。
今年のプロ野球は、可能性を秘めた大型新人が多く、例年になくフレッシュなペナントレースになりそうな気がする。野手では、阪神の佐藤輝明(近畿大)や西武の渡部健人(桐蔭横浜大)が楽しみな存在だ。投手は、巨人の平内龍太(亜細亜大)や楽天の早川隆久(早稲田大)、ヤクルトの木澤尚文(慶応大)、DeNAの入江大生(明治大)らが、いきなり活躍しそうな予感だ。
コロナ禍の影響で外国人選手の入国が遅れることもあって、優勝争いも混沌としそうだ。その意味でも新戦力の活躍が、躍進のカギを握ることになるだろう。
コロナ禍の思わぬ影響という点では、メジャーリーグに渡っていた2人の投手が日本に活躍の場を求めたことだろう。
楽天に8年ぶりに田中将大が戻り、オリックスには4年ぶりに平野佳寿が復帰した。
田中は年俸9億円(2年契約)、平野は1億5千万円(単年)と報じられている。
田中の日本球界復帰の陰に隠れて、平野の加入が霞んでしまっているが、この両者のプレーが今後のプロ野球に大きな意味を持つことになるだろう。
言うまでもなく2人ともまだバリバリのメジャーリーガーだ。田中はヤンキース一筋、平野も去年はマリナーズに在籍していた。そんな彼らが、日本の打者に対してどんな投球を見せるのか。もちろんメジャーのプライドもあって、堂々と各打者に戦いを挑んでいくだろうが、日本の選手も彼らを打てば、それはそれで大いに自信になる。メジャー流の組み立てで投げるのか、「郷に入ったら郷に従え」で日本流のピッチングに再構築するのか。そのあたりも大いに楽しみだ。
新型コロナウイルスの影響とはいえ、彼らの日本球界復帰は、これまでの流れを変えて、令和のスタイルを生み出すことになるかもしれない。メジャーに 渡った日本人選手たちは、キャリアの晩年に復帰するのがこれまでの流れだったが、これからは時期を選ばず、日米を行ったり来たりすることが普通になるかもしれない。そうなれば選手の流動性が高まり、技術的にも精神的にも、両者の交流がさらに進むことになるだろう。日米、どちらの野球が良いということではなく、選手の流動性がもっと高まれば、両方の良いとこ取りをするハイブリッドな選手が、これからどんどん現れることになるだろう。
少なくとも、一度日本球界を後にしたら、なかなかプロ野球に帰りにくいというような空気や心情が無くなることが重要だ。
田中と平野の復帰は、そうした現状に風穴を開けるものであって欲しいと願う。
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。