「収穫の秋」からプロ野球を考える
気が付けばコンビニで朝から「アメリカンドッグ」を買って食べた。別に意識して買ったわけではないが、今回はアメリカについて書こうと思っていたので、潜在意識に引っ張られたのかもしれない(笑)。
「アメリカンドッグ」は、なぜ「アメリカンドッグ」なのか?
アメリカには何度も行っているが、向こうで見かけた記憶がない。もしかすると名前だけ「アメリカン」で、本当は日本の食べ物のような気もする。
「ラーメン」が本場中国の麺類のように思えて、実は日本で作られた日本食であるように…。
「アメリカンドッグ」の発祥がアメリカか?日本か?は、さておき、プロ野球におけるCS(クライマックスシリーズ)は、間違いなくアメリカを真似して導入したシステムだ。アメリカでは、総じてPS(ポストシーズン)という呼び方をする。
新型コロナウイルスの影響で60試合のシーズンを戦ったメジャーリーグは、いよいよPS(今年は16チーム参加)に突入する。
今回は日本人選手が6人出場する。
■アメリカン・リーグ
タンパベイ・レイズ(筒香嘉智)
トロント・ブルージェイズ(山口俊)
ニューヨーク・ヤンキース(田中将大)
ミネソタ・ツインズ(前田健太)
■ナショナル・リーグ
シカゴ・カブス(ダルビッシュ有)
シンシナティ・レッズ(秋山翔吾)
10月21日から予定されているワールドシリーズにどこが進出するのか。
成績の上では、40勝20敗のレイズ(ア・リーグ)と43勝17敗のロサンゼルス・ドジャーズ(ナ・リーグ)がずば抜けている。しかし、そうした実績が必ずしもチームの躍進を約束しないところにPSの面白さがある。
このポストシーズンのシステムをめぐっては、日本ではまだまだ反対意見が多い。
実際に今年のプロ野球は、パ・リーグは1位と2位のCSを行うものの、セ・リーグはレギュラーシーズンの成績で優勝を決めてCSを行わないことがすでに決まっている。セ・パが激突する日本シリーズは11月に開幕する予定だ。
今回は日米共に変則的なシーズン(日本は120試合、アメリカは60試合)となったが、それだけにこのポストシーズンに対する考え方が、より明確に見えるような気がする。
アメリカのシーズンは、60試合という少ない試合数からも分かるようにPSに出場するチームを決める戦いなのだ。それに引き換え日本は、コロナ禍でも120試合を戦い、シーズンを通しての成績に、より価値を置く考え方が根強くある。
これを分かりやすく理解するためには、やはり農耕を主に生きてきた人たちと狩猟を主に開拓してきた人たちの違いを考えるべきだろう。春に植えた稲作の成果は、長い戦いの末に実りの秋で決する。たとえCSを行っても優勝チームに1勝のアドバンテージを贈るのも日本ならではのことだ。
一方、狩猟を得意にする人たちは、レギュラーシーズンが終わっても、さらに大きな獲物を狙って世界一(ワールドシリーズ)に挑む。狩りはいつまでも続くのだ。
乱暴を覚悟で簡単に言ってしまえば、そうした日米の文化の違いがこのシステム(CSとPS)に対する理解の差となって表れているのだろう。
肉が好きか、米を愛するかは、それぞれの好みだが、何を食べても美味しい食欲の秋(スポーツの秋)がやってきた。
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。