令和の断面

【令和の断面】vol.18「ブンデスリーガに続け!」

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    「ブンデスリーガに続け!」

    スポーツ界にとって、久しぶりに明るい、そしてうれしいニュースが飛び込んできた。ドイツのプロサッカーリーグ、「ブンデスリーガ」が16日に再開した。
    日本はもちろん、ヨーロッパやアメリカ、世界中のプロスポーツがストップしている中で、この動きは大きな励みになるだろう。

    早速、NHKのBSでも長谷部誠や鎌田大地が出場したフランクフルトのゲームを録画放送していたが、やっぱり最新のスポーツ中継は良いものだ。
    昔の名場面集や古い試合の再放送にも、それなりの良さはあるが、正直に言って、そうした放送にもそろそろ飽きてきたころだった。それだけに待ちに待った選手たちの躍動だ。

    しかし、まだまだ制約の中でのゲームであることは確かだ。
    まず無観客であることは仕方がないだろう。
    控えの選手たちが、がらんとしたスタンドの最前列に十分な間隔を取って座っている。もちろん全員がマスク着用だ。
    両チームは、できるだけ接触を避ける意味で、ピッチに別々に入ってくる。
    ボールパーソンは4人に抑え、試合中にボールの消毒も行う。
    得点が入っても、選手たちが抱き合って喜ぶことはない。
    ハイタッチもない。軽く背中を叩いたり、肘と肘をぶつけたり、足と足を合わせるロータッチで直接の接触を避けている。
    試合後の記者会見もネットや電話を使って行われた。

    選手交代は、これまでの3人から5人に枠が広げられた。これは今後、他のサッカーリーグでも導入されるIFAB(国際サッカー評議会)が認めた一時的なルールだ。中断した期間を取り戻すべく各リーグのスケジュールが過密になる。その分、交代の人数を多くして、選手にかかる負担を軽減するためである。

    こうして開催のためのルールを並べたら、これが本当にスポーツか?と思ってしまうが、とにかく今は我慢するしかない。

    もっと挙げればさらに厳しい管理体制がある。

    選手とコーチ、チーム関係者は、試合の1週間前から貸し切りのホテルに缶詰めになって外部との接触を断っていた。これを冒して近所に買い物に出たアウクスブルクのヘルリヒ監督は、ルール違反で初戦(16日)のウォルフスブルク戦の指揮を執ることができなかった。

    ブンデスリーガでは、4月末から1部、2部の全36クラブの選手、関係者がウイルス検査を受けてきた。そして、試合前日にも必ず「PCR検査」を実施して、万全の態勢で再開の日を迎えた。
    そこまでやるかという管理体制だが、だからこそ選手もレフリーも安心して試合に臨めたのだ。

    前号のコラムでも書いたが、いよいよ日本でもプロ野球の開幕が現実味を帯びてきた。Jリーグも各クラブの練習が再開され、リスタートの日程が検討されている。
    こうした中で、ブンデスリーガの再開は、大きな希望だ。
    紹介したように、選手たちをコロナウイルスから守るためのルールはかなり厳格なものだが、こうしたことを積み重ねて、懸念される要素を少しずつ排除していく以外に道はない。

    アメリカからは、有効なワクチン開発が進んでいるという報道もある。
    7月の大規模な治験で、有効性が認められれば、事態は一気に好転することになるだろう。

    とにかく今は、始まったスポーツをしっかりと守っていく。
    日本もブンデスリーガを範にコロナを乗り越えていく。
    プロ野球もJリーグも、そのためのルール作りを厳格に徹底して行うべきだろう。
    苦しいけれど、ここが我慢のしどころである。

    青島 健太 Aoshima Kenta

    昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
    慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
    同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
    5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
    オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
    現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。

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