「プロ野球の開幕 その日は近づいている」
日本野球機構(NPB)は、5月11日、12球団代表者会議を開催し、今シーズンのオールスターゲームの中止を決めた。
オールスターゲームは、今年で70年目を迎える節目の球宴だったが、史上初めて行われないことになった。
このニュースは、テレビ、ラジオ、新聞、ネット等で大きく報じられて、野球ファンもがっかりしている方が多いだろうが、私は前向きな判断だと受け止めている。もちろん華やかなオールスターゲームが行われないことは寂しいばかりだが、これを中止にするのは、もっと優先したいことがあるからだ。それを考えると、オールスターゲームの中止は、歓迎すべきことだろう。
何を言いたいか。
そう、オールスターゲームを中止するという決定は、いよいよシーズンの開幕が現実味を帯びてきたということだ。これからのシーズン開幕を想定すれば、およそ1週間を要するオールスターブレイクもレギュラーシーズンの試合に当てるべきだろう。すべてはレギュラーシーズンの日程を確保するため。球宴の中止は、シーズン開幕を本気で遂行する決意の表れだ。
だから私は、この決定を大いに歓迎している。
NPBの斉藤惇コミッショナーも、会見で今後の見通しについて語っている。
「今月末までの感染状況を見ながら開催準備をして整うことを条件に、来月の半ばから下旬のどこかで開幕できることを目指そうということは12球団で一致した」
今後は、14日と21日に行われる政府の専門家会議を受けて、感染の情勢を見極めながら開幕時期を検討していくというのだ。
具体的な日程も出ている。
最短なら6月19日の開幕もあり得る。
また、アイデアの段階としながらも、パ・リーグを関西で、セ・リーグを関東で集中開催して選手の感染リスクを下げようという意見もあるようだ。
台湾や韓国では、もうすでにプロ野球が開幕している。
球場に入れる観客数を制限してそれぞれが離れて座ったり、選手の移動を外部との接触を避けて専用のバスで行ったり、日本でも参考にできることがありそうだ。こうした情報もNPBはすでに入手しているという。
大きな焦点は、緊急事態宣言がいつ解除されるかということになるが、その時を待ってプロ野球が開幕できるように、準備は着々と進んでいる。
大相撲5月場所が中止になり、ラグビーのトップリーグもバスケットボールのBリーグも、残るシーズンの打ち切りが決まった。NPBと一緒にシーズンの再開を模索してきたJリーグも、まだスケジュールが決まっていない。こうした状況の中で、プロ野球にかかる期待は大きい。
高校生のインターハイも中止が決まり、夏の高校野球も残す時間を考えると微妙な状況にある。高校生たちには野球をさせてあげたい。
プロ野球の開幕は、こうした現状を抜け出すファンファーレになるはずだ。
最初は無観客であっても、プロ野球が始まって連日試合の中継があることは、多くの人の気分転換に寄与することだろう。そして、全国の野球ファンに「野球のある日常」を届けることになる。
オールスターゲームの中止は残念な決定ではあるが、それと引き換えにプロ野球がはじまる。
その日は、確実に近づいている。みなさん、もう少しの我慢です。
昭和33年4月7日生/新潟県新潟市出身
慶応大学野球部→東芝野球部→ヤクルトスワローズ入団(昭和60年)
同年5月11日の阪神戦にてプロ野球史上20人目となる公式戦初打席初ホームランを放つ。
5年間のプロ野球生活引退後、オーストラリアで日本語教師を経験。帰国後スポーツをする喜びやスポーツの素晴らしさを伝えるべくスポーツライタ―の道を歩む。
オリンピックではリレハンメル、アトランタ、長野、シドニー、ソルトレークシティー、アテナで、サッカーW杯ではアメリカ、フランス、日韓共催大会でキャスターを務める。
現在はあらゆるメディアを通して、スポーツの醍醐味を伝えている。